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【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?  作者: 山咲莉亜
第1章 幕開けは復讐から

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閑話 とある兄妹

「お帰りなさい、お兄ちゃん」

「ただいま。母さんは?」

「お母さんはお店の方の片付け中。お兄ちゃん、今日はお友達と遊びに行ってたんだっけ?」

「ああ。公爵家のご子息二人と、精霊王。これだけ聞くと俺と釣り合ってねぇな。精霊王はお前も知っているだろ?」

「うん。ナギサ様、だよね?」

「ああ」


 今日はナギサやセイン、ランスロットと遊びに行っていた。学園に入ってからは勉強で忙しかったし貴族ばかりの学園で親しい人が出来るわけもなく、今日のように友人と遊びに行ったのはいつぶりか分からない。

 ナギサは俺が試験をさぼって木の上にいると、いきなり目の前に現れた。最初は気付かなかったが、あの『絶世の美青年も恥ずかしがるほど完璧な容姿』『男性らしい低さもあるのにうっとりするほど甘い声』『才色兼備』『王族にも劣らないくらい完璧な仕草』と噂されている人物だった。


 これは最近になって広まった話だが精霊王でもある。だが精霊王というにはあまりにも気さくというか、一緒にいて気が抜ける性格をしている。それはもしかすると計算の内なのかもしれないと思うと恐ろしいが、それでも俺にとっては大切な友人だった。

 どこにいても何をしていても嫌がらせをされたり嫌味や皮肉、罵倒を浴びせられる。そんな中で偶然な出会いとはいえ、差別の目ではなく俺自身を見てくれたナギサには救われていた。そんなナギサの友人は公爵家のご子息二人と言う俺からすると恐れ多い相手だったが、その二人もナギサと同じように接してくれた。


 今になって思う。あの時、ナギサに出会わなければ俺の中で大事な学生生活は最悪な思い出になっていただろう、と。ナギサと関わるようになって様々な変化があった。


 初対面でナギサが言っていたように周りの意見が気にならなくなった。全くとはいかないが、それでも確実に以前より受け流すことが出来るようになっている。つまりスルースキルが磨かれたわけだな。平民なのにも関わらず優秀だと将来を見込まれて入学したくせに首席にもなれないのかと嘲笑われていたが、ナギサが勉強を教えてくれるおかげで高度な教育を受けているはずの貴族連中を押し退けて学年トップに這い上がった。

 クラスメイトも、ほんの一部ではあるが前より笑顔が増えて接しやすいと話しかけてもらえるようになった。


 ナギサは自分に向けられる好意にあり得ないくらい鈍い。周りからするとバレバレなくらいナギサを慕う生徒でも、ナギサの中ではどう変換されているのか自分に取り入って公爵家の子息とお近づきになりたいだけだろう、などと思っているらしい。

 才色兼備な上に無自覚だろうが自然な気遣いが出来る紳士。そんな男が好かれない理由がないだろう。男女問わず、教師でさえナギサを信頼しているし恋愛的な意味で慕う者も数えきれないほど。そんなナギサと一緒にいるのだから、俺たちが嫉妬されることも少なくないくらいだ。


 長くなったが結局何が言いたいのかと言うと、俺はナギサのおかげで毎日が楽しくなった。だからこれからはナギサやセイン、ランスロットにとっても良き友人であれるよう努力したいと思っている。


「……お兄ちゃん? ちょっと聞いてるの? お兄ちゃんってば!」

「あ、ああ、なんだ?」

「どうしたの? なにか考え込んでいるようだったけど……」


 妹が怪訝な目で俺のことを見つめてくる。


「なんでもない。ただ、ナギサのことを考えていただけだ。前にナギサと直接話してみたいと言っていただろ? ナギサに約束を取り付けておいたぞ」

「本当!? ありがとうお兄ちゃん!」

「ああ」


 妹はナギサのファンクラブに入っている。これ以上ないくらい好きらしいが、それは尊敬や憧れなのか、それとも恋愛なのか……残念ながら俺には分からない。

 だがもし恋愛だったとして、妹が本気になれば男の一人や二人簡単に落とせるだろう。兄としての贔屓目がなくとも間違いなく妹はモテる。あの完璧超人精霊王様の隣に並んで霞まないのは妹くらいのものだ。おまけにナギサと同じくらいとはいかなくとも、頭が良くて身体能力も高い。俺と同じく平民なのに立ち居振る舞いに品がある。だがナギサは女に興味がなさそうだ。その意味では妹でも無理かもしれない。


 だがまあ、どちらにしても俺は見守ることしかできない。ナギサのことも、妹のことも。


「二人ともー! 早く来てー!」


 突然母さんの悲鳴のような声が聞こえたと思えば、すぐに嬉しそうに呼ばれた。母さんの経営するカフェの二階が俺たちの家だ。暗くなり始めて店はもう閉めているはずなので、今一階から話し声が聞こえる理由は一つしかない。


 顔を見合わせた俺たちは母さんのはしゃぎ声に苦笑して、母さんが話しているであろう父さんの元へと向かったのだった。

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