54 精霊王族
『アリサとローランドには、時代が時代のために今はそれどころではないと拒否されたのだ。精霊王は初代から我の生み出した者が継ぐこととなっているが当初の予定は違った。本当なら初代精霊王とその伴侶との子を次代の精霊王に、つまりその代の精霊王の血を引く者を精霊王にしたかった。先ほど言った通りアリサとローランドは無理であったがそなたなら大丈夫であろう? 他の種族と同じように王族というものを作ってほしい』
「はぁ……? 私も無理ですよ」
『そなたに拒否権はない。これは命令だ。そなたはちょうど良かった。前世の記憶を持つがゆえにこの上ないほど優秀だ。これからの精霊王にはその血を継がせたい。そうすればほぼ間違いなく、そなたと同じとまではいかなくとも優秀な精霊王が生まれる。相手の身分や立場は問わない』
「だから、無理ですって。私があなた様の命令を聞く義理はないのですよ。先日のことで貸しもありますしねぇ」
冗談じゃないよ。なんで俺がそんなことしないといけないのかなぁ? 俺は好きでもない女と子を作るつもりは一切ない。そんなことするくらいなら、彼女を裏切るくらいなら死んだ方がマシだね。
『ほぅ、我の命が聞けぬと?』
「そうですねぇ。ですが今の私と戦っても良いことは何もないのではないですか?」
俺と世界の力はほぼ差がないとはいえ、どちらも本気で戦った場合に勝つのは恐らく俺。そんな俺と戦うのは得策ではないと思うんだけどー。
『───………』
「戦ってみますか?」
『……やめておこう。そなたが本気になれば我でも勝てる見込みはかなり低い上、この国どころか最低大陸は亡ぶ。だがそなたはいずれ、必ず伴侶を得ることとなる。我の命は聞かずとも自らの意思で我の意を汲むこととなるだろう』
「そーですか。ではもしそうなることがあったなら、私は初代精霊王となることも検討して良いですよ。ただし、強制は禁止ですからー」
『良かろう』
いや、なんで俺が『良かろう』とかそんな上から目線で言われないといけないのー? 今日はなんかもう疲れたから良いけど、この前の借りはいずれ必ず返してもらうから。
「私はあの時断罪を止められたことをまだ許しておりませんのでそのことをお忘れなきよう。本当に私のことを駒ではなくご自分の子だとお思いなのでしたら、重要な時に口を挟んでくるのをご遠慮くださいね? これ以上同じことが続くようでしたら私としても見過ごすわけには参りませんのでー」
『…………』
「それでは用件は終わりのようですし、私はこれで失礼致します」
『……ああ』
結局最後の最後まで口調が定まらなかったねぇ……次に会うことがあるならそれまでに直しておくことを進めるよー。
それはそうと、ね。俺の前世を知っているのなら良くあんなことを言えたよねぇ……




