53 精霊王の主、世界
「こんばんはー。やっぱり来られたのですねぇ。来なくて良かったのですけどー」
『こんばんは。仮にも親にかける言葉ではないね』
「私は親だと思わないので」
玉座に腰を掛け、口調こそ丁寧にしているけど内容自体は大変失礼な言葉を告げる相手は精霊王の親にあたる世界。世界と言っても本来実体がある存在ではないので、人間の姿を取ってこの場にいる。
親に向けているとは思えない辛辣な言葉と冷ややかな視線。もはや取り繕う気持ちの欠片もないナギサに、世界は呆れた顔をしていた。
『ひどいことを言うね。これでも我はそなたを気にかけているというのに』
「ご冗談を。いつも肝心な時にばかり茶々を入れてくるあなた様を私が敬えるとでも思いますか? 親とは名ばかりで俺のことは駒としか思っていないでしょうに。ですが、誰がなんと言おうと私にとっての親はあなた様ではございませんので、安心して駒とお思いになってくださいな」
『そうだろうね。そなたにとっての親は桜井家の者だ。だが我もそなたと同じように誰がなんと言おうともそなたのことを自らの子だと思っている。駒などと思ったこともない』
「そーですか。駒にすらなりえない不出来な子供ですみませんねぇ」
そもそもなんで父さんたちのことを知ってるの? 言った覚えはないんだけどなぁ。
『そなたが我の言葉を真っ直ぐ受け取らないのも今に始まったことではない、か。そのあたりはまだ幼いな。それと、桜井の者たちについては我が知らないわけがない』
「なぜです?」
『そなたのことを我が知らぬわけがなかろう。それにそなたの臣下でそなたの魔力で生み出されているのだから、ナギサの前世の記憶も一部は精霊たちに継がれている。ついでにこの世界には度々転生者が現れるものだ』
「初耳ですねー。そのような話はこの数百年、一度も聞いたことありませんけど?」
というかまずその定まらない口調やめてほしいなー。なんか気になるんだよねぇ。元々実体のある存在じゃないから仕方ないと言えば仕方ないのかもだけど、少しで良いから努力してくれないかなぁ?
『当然だよ。そなたのように当人たちは生涯隠し通そうとするのだから。そなたが転生して前の世界に似たところがあると思うことが多かったのは、過去の転生者たちの働きによるものだ』
「へー。有益な情報感謝致します。それで、感謝ついでにもっと詳しいことは教えてもらえないのでしょうか」
『はいはい、特別だよ。良いことを教えてあげよう。転生者は一つの時代に一人とは限らない。我でも転生してくる者を選べるわけではないから、どの種族に誰が転生してくるかは分からない』
はー? 世界なんだったらさ、分からないとか言わずに全部のことを把握しててよ。俺の行動や隠し事ばかり知らなくて良いから、もっと別のところでそのストーカー気質を発揮してくれないかなぁ?
『そんな無茶な。それにストーカー気質とは些か失礼が過ぎるのではないか?』
「それはそれは、申し訳ございません」
『思ってもいない謝罪の方がよっぽど失礼だな。まあ良い、それより本題だ。そなたには今までにないことだがやってほしいことがある』
『前置きとかいらないのでさっさと話してくれません? あなた様とゆっくり話していられるほど私は暇ではないですよ」
『暇とはどういう意味か、一度辞書で引いてみることを進めよう。………それは良いとして、そなたには本当の意味での初代精霊王になってほしいのだ』
「本当の意味? 初代精霊王ならアリサ様がいらっしゃいますが?」
何が言いたいんだろうね、この人はさぁ。すごーく嫌な予感がするんだけど。それはもう、これ以上ないくらいに。
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