46 王室御用達のカフェ『エルサ』
「どこ行くのー?」
「昼食でも取るか? もう良い時間だろう」
「僕は良いですけど…今の時間、どこの店もいっぱいだと思いますよ」
お昼ご飯時だもんねぇ……俺は別に食べる必要はないんだし昼食はなくても良いけど、みんなはそういう訳にはいかないよね。でも貴族が、それも公爵家のご令息二人が毒見もなしに食事して大丈夫なの? まあ毒が入っていれば俺が気付けるけどさ。そういえば今更だけど男四人で街歩きってどこに行くものなんだろ。日本のような施設はさすがにないでしょ。
「だったら俺の家に来ますか? ここ、王都でカフェをやってるんですけど一席くらいなら使わせてくれるかも。味は保証しますよ。妹も友人と遊びに行ってていませんし」
「そうしよっか。二人ともいい?」
「はい」
「ああ。それとセインは元からだから仕方ないとして、みんな名前呼び捨てで敬語もなしにしないか? よそよそしい感じがする」
あ、セインくんのこの話し方って元々だったんだね。身分関係なく敬語ってこと? 俺とは逆だねー。
「わ、わかりま……わか、った。ナギサ、セイン、ランスロット……でいいか?」
「ああ。俺もエリオットと呼ばせてもらう」
ちょっとエリオットくん? なんで俺の名前を一番に呼んだのかなぁ? 分かってるよ、平民だと思ってたから最初からその話し方で慣れてるし言いやすいからでしょ。全然良いけどさ。
「それで、何というお店ですか?」
「『エルサ』。母さんの名前からそのまま取ってあるんだ」
「あのお店ですか! 王室御用達でしたよね?」
「ああ」
へーそうなんだ……すごいね。聞けば普通に前世で言うレストランみたいな食事もあるし、お菓子やスイーツ系もあるんだって。それに王室御用達はほんとにすごいねぇ……
王室御用達って、それだけで店に箔が付く。実際に人気があるから御用達にまでなっているんだろうけど、中々なれるものじゃないよね。しかも王都にカフェというのはたくさんあるからよっぽどじゃないと埋もれていくでしょ。
◇
「いらっしゃいませ! ……ってあら、エリオット?」
「母さん、いま席空いてるか? 昼食はここで取ろうってなったんだが」
「あらあらエリオットのお友達? 仲良くしてくれてありがとう! ちょうど今は空いてるのよ、席に案内するわ」
おっとりしてるというか、元気というか、楽しそうなお母上だね。それに精霊の気配も感じ………ん? 待って、精霊の気配? ということは彼女、もしかして………
「シルフの奥様?」
「っ! な、なんで……あ、精霊王様?」
「そう。言ったら駄目だったかな?」
個室に案内してもらいながら聞けば大丈夫だと予想通りの答えが返ってくる。
「そうです、わたしはシルフの妻ですよ。一緒に暮らせるわけではないですから、面倒なことにならないよう一緒に相談して、夫は亡くなったということにしてありますけどね。まさかバレるとは思いませんでした。さすがは精霊王様ですね!」
「シルフの魔力を感じただけだよー」
「いつも夫と息子がお世話になっております。これから長いお付き合いになるとは思いますが、末永くよろしくお願い致しますね!」
「こちらこそだよ。それと敬語は良いからね」
「分かったわ」
なるほど、たしかに綺麗な人だね。綺麗というか可愛いと言った方が良いのかな? ふぅん……シルフはこんな感じの人が好みなんだ。へぇー……
「じゃあエリオットくんは大精霊と人間のハーフかぁ。初対面の時、普通の人間とは何か違う気がするなって思ったんだけど当たってたね。精霊とのハーフってことは俺とも親戚になるのか。祖父にあたるかな」
今の俺は三、四百歳くらいだったはずだから、年齢的には祖父以上だね? 曾祖父でも足りないかな。
「なんで学園に通ってんだよ……じいさんじゃねえか」
「失礼な。精霊王としてはまだまだ若い方だよ? 精霊王は数千年は生きるから」
大精霊であるシルフと結婚したってことはエルサちゃんも大分寿命伸びただろうね。白い結婚じゃないなら自然と魔力が相手に行ったりするから。白い結婚なら寿命は変わらないけど。
俺も誰かと結婚したなら相手はめちゃくちゃ長生きになる。さすがに俺よりは短いだろうけどさ。
「お待たせしました」
「ありがとう」
俺は生クリームとフルーツたっぷりのパンケーキを注文した。パンケーキの量自体はそんなに多くない。俺以外はけっこう量が多いね。俺は割と少食であまり食べられないから羨ましい。育ち盛りだとしっかり食べないとすぐお腹が空くのかな、やっぱり。
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