115 必要だったから
「友人に手荒な真似はしたくないけれど、こうするしか《《助ける》》方法はないから」
「……ッ」
俺から距離を取ろうとして立ち上がったセインくんの背後に回り、彼の心臓を短剣で貫いた。吐血し、倒れそうになる彼の両腕を拘束、そのまま後ろの壁に抑え付けた。
「俺は父さんに聞いたことがある。『敵対している人物がいる。こちら側の者が家族を人質に取られ、従うしかなくなった。それにより自分の仲間に危害が加えられそうになっている──空想の話に過ぎませんが、このような状況になった時、父上ならどうしますか?』、と。父さんは迷うことなく『切り捨てる』と答えたよ。人の上に立つ者は他人に何と言われようと、残酷な手段を取るしかない時もある」
咳き込み、血が流れ続けている状況でも、彼は俺の言葉に耳を傾けてくれる。
俺がセインくんを殺すと言った時、彼は距離を取ろうとしたけど、本当は抵抗する気なんて無かった。俺はそう断言できるよ。実際、今も俺の手を振り解こうとしないし。
「少しだけ、父さんの意見に俺の考えを付け加えようと思ってね。俺も普段なら迷いなく始末する。だけど今回は……」
セインくんを視て、問題ないことを確認してから治癒魔法をかけた。あと少し遅ければ本当に命を落としていただろうねー。彼も意識が朦朧としていたはず。これでもできる限り急いだから許してほしい。
「今回は、治癒したよ」
「……なぜ」
「父さんと同じく裏切り者は始末する。だけど俺は仲間を取り戻す方法も探す。……父さんの答えも、俺が付け加えた意見も、どちらも正しいと思う」
時と場合にもよるけど、今回に関しては俺の答えが最善だったんじゃないかな? だってセインくんを殺したらシュリー公爵夫妻に恨まれるし、セリスくんには殺されそうになるだろうし、セナちゃんやイレーナちゃんには泣かれてしまう。イレーナちゃんを泣かせるとアリスも悲しむ。あとは、セイン・シュリーのファンクラブにも夜道で刺されるかもしれないな。
「……殺すのではなかったのですか」
「うーん……そういう行動を取り、もしもミスをしてしまったら本当に死んでたってだけで、俺の意思で殺すつもりはなかったかな。君を助けるために必要だったから刺しただけのこと」
「どうして」
「さっきから質問ばっかりじゃない? まあいいけどさぁ……端的に言うなら、君も被害者だからだよ」
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