86 事の真相
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何があったのかというと、二人が屋敷内で過ごしているといきなり部屋の中に一人の男が現れた。恐らく気配を消して忍び込んだのだろうとのこと。護衛や使用人は全滅、生きてはいたけどその場にいた者も騒ぎを聞きつけて後から来た者も、全員一瞬にして意識を刈り取られた。
男は透明の糸のようなものを持っていたらしい。そしてそれを使ってクレアちゃんとミシェルさんに攻撃してきた。クレアちゃんは魔法で、ミシェルさんは傍に置いていた剣で対抗しようとしたけどそれも攻撃が通らないし剣は砕かれた。どうする術もない中、ランが祝福している相手の危険を察知して助けにきた。自分達には結界を張り、何のためにここに来たのかを問いながらも全力で応戦。
男は『精霊王を倒すなら、まずはその周りからだろう?』と薄く笑みを浮かべるだけでその後は何も言わず、ただただランへの攻撃を続けた。ランも中位精霊、戦闘中に異変を感じた男は本気で逃れようとしたが強力な一撃を食らってしまい、それのおかげで撃退に成功したが残りの魔力がかなり減っていたランは死を覚悟でその魔法を放ったためにそのまま魔力が尽きた。
クレアちゃん、そしてミシェルさんが話してくれた内容をまとめるとこんな感じ。
「……彼の最期の言葉は、『今度こそ守れて良かった。ナギサ様に、二人を守ると決めたのは僕だから自分を責めないでと伝えておいて。……二人と一緒に過ごした時間は短かったけど、とても充実した日々だったよ。これからも元気に生きてね。本当に、たくさんの幸せをありがとう』でした」
「……そう」
「あたし達を庇ったせいでランは消えました。許せないでしょうから何でも罰は受けます。本当に申し訳、」
「黙りな。俺に謝罪して、罰を与えられたところでどうにもならないでしょ」
「ですが……」
「俺に言わせないでよ。……分かんない? ランが命を懸けて守ったその身をもっと大切にしろって言ってんの! ランが選んだ道なんだから、幸せだったなら俺から言うことはない。ただ……ランのこと、忘れないであげてよ」
その命を懸けてでも二人を守ると決めたのは他の誰でもなく、ランなんだよ。祝福してたのはクレアちゃんだけでもミシェルさんのことも大事に思ってたのは知ってる。大切な人を守るためなら自分の命くらい懸けられる気持ち、俺は痛いほどに分かる。ランのあんなに幸せそうな顔、あの子が二人に出会って深く関わるようになるまでは見たことがなかったよ。
「精霊ってね、自由だし気まぐれだし、いつも楽しそうに見えるかもしれないけど。でも実は自分の幸せを見つけることがすごく苦手なんだよ。強い種族だからこそ、力を持つ存在としての恐怖を誰もが抱えてる。感情の大半がそれで埋まってるから、そのほぼ反対に位置する『幸せ』を見つけられないわけ。それはランも同じ。だから二人とも、ランに幸せを教えてくれてありがとう。たくさんの愛情を注いでくれて、本当にありがとう」
「お礼を言われるほどのことでは……」
「素直に受け取ってよ。俺は────愛する家族を守り抜いたランを、王として誇りに思う。だからこの話はもうおしまい。分かった?」
「……っ分かり、ました」
泣きそうな顔してるなぁ……きっと俺達がこの場にいなくなったら泣いちゃうんだろうね。ランが消滅してから今まで泣くのを我慢してたのかな。
いっぱい泣きなよ。君達もランを家族だと思ってるって、前に言ってくれていたのを俺はしっかり覚えてる。これからも忘れないで愛してあげてよ。
────でもラン、親としての俺は許さないからね。俺が死んでランともう一度会うことができたなら、その時はお説教数時間コースだから。だけどその後は……苦しみながらもよく頑張ったね、って褒めてあげるよ。
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