83 裏切りは構わない
「ねぇ、レン? ちょっと手を貸してよ」
「はい」
「これあげる。俺と関わる以上これから面倒なことに巻き込まれてしまうかもしれない。その時にレンの身に何かあったら嫌だからね」
渡したのは前にアルフォンスくんにあげたピアスと同じもの。何かと危険な目にあっているようで、前に二度目の呪いを浄化したときはすでに壊れて消えてしまっていた。レンとは今ですでに深い関わりがあるけど、最終決戦に向けて本格的に動き出すのなら一度きりでも守ってあげたい。俺のせいで怪我でも負わせたら申し訳ないなんてものではないから。
「精霊ではない私でもものすごい魔力を感じる……知ってたけど、やっぱりナギサ様の魔力量って規格外なんだね」
「まあね。普通はこんなもの作れないから否定しないよ」
こんな綺麗な見た目だけど、込められた魔力は下位精霊一人と同等。下位精霊は精霊の強さでいうと一番下だけど普通に一国を亡ぼせるだけの実力を持つ子も少なくない。逆に言うならそれだけの魔力量を込めないと守ることは出来ないわけだけど、俺だからさ。常に溢れ出しているくらいに魔力が多いから俺の安全のためにも積極的に魔力を消費した方が良い。
「レン、来て。ここは禁書室なんだけど、本当は精霊王以外立ち入り禁止だし入れないんだよ。入るには膨大な魔力が必要だし。だから秘密にしてね?」
魔力は俺がレンの分も補ってあげる。そう言って手を引くと遠慮がちに部屋に入ってきた。
────禁書室に保管されている本を傷付けることは決して許されない。傷付けようとしたら初代のアリサ様が張った結界に阻まれるだけでなく、大きな罰を受けるらしい。アリサ様の結界は俺よりすごくて、興味本位で試したらこの身が滅びるだけだと思う。だから具体的にどんな罰を受けるのかは知らない。だけどこの話が伝え続けられる限り禁書は綺麗な状態を保つんだろうね。あの方の結界は何千年先も、何億年先も張られ続けるだろうから。
「……背表紙を見ただけでも分かる。絶対に私が見ていいものではないよね!?」
「うん、だって禁書だし。だからこの部屋に入ったことも内緒にしてって言ったし、当然見たものも他言厳禁だよ」
「それはもちろんだけれど、私が裏切る可能性は考えないの? 一国の王ならば国のために一人や二人裏切ることがあってもおかしくないのに」
「レンが例え国のためであっても俺を裏切るようなら最初からここまで気を許しはしない。精霊は良くも悪くも敏感なんだよ、そういうものにはさ」
別に一時的に裏切るのは良いよ。ちゃんと俺が納得できる理由があれば、だけど。当然のことながらそれで仲間を傷付けた場合には容赦しないけどね。でも基本的には最終的に俺の味方なら何でも良い。そこまで縛り付ける権利はないし。
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