78 甘く蕩ける
「このままずっと幸せな日々が続けばいいのに。面倒なことも大変なこともなく、静かに余生を送りたいよー」
「ナギサの余生って……」
「……三千年くらい。どちらかといえば、いや……間違いなくこれから先の方が長いんだけど」
「そんなに長いなら多少刺激がないとつまらないんじゃない?」
違いない。でも忙しい時や疲れているときはそんな風に思ってしまうものなんじゃない? 体力はまだまだ有り余ってるんだけどさ、ここ最近は精神的疲労でどうにかなっちゃいそう。
「アリス、俺は癒しを求めます」
アリスと一緒にいられるだけ十分癒されるけど、せっかく傍にいるならね?
「俺はお世話されるより君のことを甘やかしたいな」
「いいよ。ナギサが満足いくまで甘やかしてくださいな。……これ以上にすることがあるのなら、だけど」
軽く振り向いて目を合わせてくるアリス。すでに俺の腕の中にいるのにって言いたいんだろうけど、できることはまだまだあるよ。
「同意は得たからね。あとで怒らないでよ」
アリスが辛くないよう横抱きにして膝に座らせ、不思議そうにしている彼女の唇を奪った。首を傾げていたからちょうどいい角度。そのまま彼女の顔を見れば、驚いたのか目を見開いていた。
「び、びっくりした……」
「ふふ」
「っ、ん……!」
先ほどの触れるだけのキスとは違い、今度は少し強引に唇を重ねる。噛み付くように深く長く繰り返されるキスに、アリスはされるがままでしかいられない。生理的な涙が溜まり、零れ落ちそうになったところで俺はアリスから離れた。
「……君は本当にかわいいね」
「…………っ」
腰が抜けたのか、縋り付いてくるアリスの目に溜まった涙を拭って言うと、さらに頬を染めて俺の胸に顔を埋めた。抗議するように頭を押し付けてくるけど全然痛くないし、俺からするとやっぱりかわいいだけ。語彙力なんてものは知らないよ。優しく髪を梳くように撫でると気持ち良かったのか『もっと』、とでも言わんばかりの顔で見上げてきた。
「だいすき……」
「うん、俺も。苦しかった?」
「胸が……ナギサの目がすごく優しくて甘かったから、胸がきゅうって……なった」
ぼんやりと、それでも蕩けるような甘さを孕んだ声でそんなことを言う。こんなかわいい声に言葉、他の誰にも聞かせられない。だって、俺が耐えられないから。破壊力が高すぎる。アリスのこんな姿は俺だけが知っていればいい。
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