74 癒し空間
「わぁ……」
「これじゃないかな? ナギサが頑張ってるからご褒美に作ろうって精霊様達と話したの。いかがです? ……って、言うまでもないね。目が輝いてる」
俺の部屋の机に並ぶ数々のお菓子やスイーツ。和室だから雰囲気は合ってないけどこれってさ……
「アフターヌーンティー……! これ、久しぶりに見た」
「前世ぶり? うちのカフェでも予約したら用意できるんだよ。ちなみにレシピはお母さん考案のもの、作ったのは主に私とウンディーネ様、リー様」
「アリス様、こんなにかわいくてお料理もできるとか女子力が高すぎるよねぇ。ナギサ様も喜ぶだろうしわたし達も楽しいから作ろうって話になったの。だから好きなだけ食べていいよぉ」
「ルーはあまり甘いものを食べないから軽食もあるよ!」
なにこの癒し空間。ルーは俺に同行して疲れたのかアフターヌーンティーよりリーがいいらしい。一口だけ食べて『お先に』と、リーを連れてどっか行った。ルーはいいね、この後は何もすることがないから。俺はまだやることが残ってるのに……
まあ同行してくれて、ついでに無理矢理ではあったけど俺の怒りを鎮めてくれたから暴れずに済んだし、お疲れだろうから止めはしないけど。
「ウンディーネ様も行っちゃったね。そういえば大人の姿のルー様、初めて見たかもしれない……普段はやっぱり子供の姿だからかわいい要素が強めだけど雰囲気違うね」
「かわいい系であることに変わりはないけどねー。お願いだから性格ももうちょっとかわいくなってくれないかなぁ……」
「ナギサがナギサであるうちは無理だと思う!」
そんな自信満々に言わなくても良いじゃん……
満面の笑みで言うアリスに心の中で文句を言いつつ、用意された席に座る。するとアリスも俺の隣に座って向かい合うように体の向きを変えた。
「ナギサ、口開けて?」
「はい」
『あーん』なんてさ、本当にやる人いるのかな? アリスはたまにやってくる。今更羞恥心なんて湧いてこないけど俺の反応を見るのを楽しんでいそうではあるよね。そんなに面白い反応とかしてあげられないのに。
「ん……甘いね」
「甘すぎた?」
「いや、全然。すっごく美味しいよ、ありがとね」
俺が甘すぎるなんて感想を持つはずがないんだよねー。自分でもヤバいと思うレベルの超甘党だから。俺に食べさせたのとは別のものを口にしているあたり、アリスにとっては甘すぎるんだと思う。
「それは良かった。ところで覚えてる? 今日は私がナギサのお世話をするんだからね?」
「あーそういえば……正直逃げ出したい気持ちでいっぱいだけど……男に二言はありません。どうぞお好きに」
「やった! ちなみに倒れたナギサ動き回るのは心配だからお世話するのであって、別に楽しそうだからなんて不純な理由じゃないからね? だから安静にしててね? できる限り抵抗禁止だよ?」
「はいはい……」
絶対嘘、大嘘でしょ。予想通りの言葉だしさ、本当に嬉しそうなんだよねぇ……そんなに俺のこと好き勝手したいわけ? 俺だったら絶対俺の世話なんてしたくないよ。断固拒否する。だって面倒なばかりでいいことないじゃん。まあアリスの世話を焼くのは好きだし、恋人相手だから楽しめるものなのかもしれない。
お願い、早く朝になって。外が暗くても時間はまだ夕方。すでに疲れてるからさ……! アリスのことだから疲れを癒してくれるんだろうけど今はとりあえず怖いよ。何されるか分からないからね。
まあ起こってもいないことを恐れてもどうしようもないから、一旦アリス達が作ってくれたスイーツ類を無心でいただくことにした。
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