72 無慈悲な側近
◇
「はぁ……」
「ナギサ様……こんなところで倒れないでください。踏まれますよ」
「…………」
「お疲れなのは分かりますが床では体を痛めます。抱き上げてお部屋までお連れしましょうか?」
「……五分。五分だけ待って」
もうねぇ……心身共に疲れ過ぎて動けない。というか動きたくない。でも大の大人が抱き上げられるのは本気でお断り。何度も抱き上げられたことあるけど。でもさ、普通男が男を抱き上げようとする? 俺は体に風魔法を纏っている時以外なら普通に重いからね?
「ルーはその細身のどこにそんな筋力があるの? 俺、体重六十はあると思うよ……?」
シルフもサラマンダーもノームも、ウンディーネ以外の大精霊は全員俺を抱き上げたことがあるらしいんだよ。それは俺がそこらで寝ちゃった時とか倒れた時なんだけど、魔法で軽くするまでもないとか言ってたし。少しでいいから俺にもその筋力を分けてほしい。
「ナギサ様は身長がおいくつです?」
「前世で、十七歳の時点では百八十だったけど」
「それならもう少し伸びているかもしれないですね。どちらにしても身長と体重が見合ってないの、分かります? あなたは細すぎるんですよ」
「普通だよ」
モデルなら同じような体型の人はいくらでもいるよ。そんなことより疲れたから今は何も考えたくない。でもルーが五分待つ間だから話しかけてきているのも分かってるし、待たせてるから無理に話を終わらせられないんだよ……
ちなみに俺がどこで倒れているのかと言うと、宮内の周囲に何の部屋もない廊下。適当に転移したらここ着いたんだけど、この長い廊下を移動する気にも魔法を使用する気にもなれないから諦めた。
「だってナギサ様、それなりに筋肉もあるじゃないですか」
「運動系の習い事をたくさんしてたからねー」
「はい。なのでナギサ様の主な体重はほぼ筋肉だけなのではないかと思いまして。脂肪あります? 甘いものばかり食べるくせに少しでも肉の付いた姿を見たことがありません」
「まあ俺はどちらかと言うと少食だからね。甘いものは別だけど。それでも体型管理はしてるし。……じゃなくて、元々何の話だっけ?」
「えっと……忘れました。今はただ疑問ぶつけているだけです」
そう。じゃあ寝かせてよ。どうでもいいことしか聞いてこないじゃん。俺は食べれば食べるだけ太っちゃうから、その分ちゃんと調整してるんだよ。精霊は食事を取る必要がないから、俺が太る時は甘いものを食べすぎた時くらい。そしてその甘いものの摂取を制限するのは結構辛いんだよねー……
でもアリスの隣に立つのに相応しくありたいから、容姿には割と気を遣ってる方だと思う。
「もう少し太ってくださいよ。今日の朝、着替えのお手伝いをするために触れた時に思いましたが、腰が細すぎて心配になります。スタイルが良すぎるのですよ」
「華奢というわけではないでしょ。だから問題なし」
「そうですか。では五分経ったので移動しますよ」
「待って、絶対嘘! そんなに経ってないでしょ!」
「行きますよ」
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