62 精霊王の正装
◇
「ねぇ、ルー。この服装やだ……」
「ご自分で着替えないのなら大人しくしていてください。会合は世界中の重鎮が集まるのですよ? 今日くらいは正装で我慢してください。どうせ何を着てもお似合いなのですから嫌がることもないでしょう」
「疲れるから嫌なの。どうしても着せたいならルーが何とかして」
俺が自分からこの衣装を着ることはない。精霊王の正装というのは、俺が普段着ている衣装に色々と布だとか飾りだとかを足したもの。本当はこれは正装ではなくて精霊王の通常の衣装なんだけど、俺は動きづらいから勝手に外していた。だからまあ、大きい行事に参加する時くらいは正しい着方をしろと言われているだけ。
ルーの言ってることが正しくて俺がおかしいんだけど、こんな豪奢な衣装を俺が着てどうするのって感じ。それが俺の意見。
「たった一日だけなんだからここまでしなくていいじゃん」
「一日だけならちゃんとしてください」
「…………」
「ほら、腕を伸ばしてください」
この子、本当に俺の臣下? たまに俺より強い気がするんだけど。
「結構大変ですね。もう見慣れているので何も思いませんけど、こうして見ると普段のナギサ様がいかに楽な服装をしているかが分かります」
「俺も。今すぐ全部外したい。外してても十分豪華なんだから良くない?」
「駄目です」
頭が固いねぇ……ちょっとくらい許してくれても良いのに。衣装が重いのは風魔法でなんとかできる。だとしても動きづらいのと違和感がすごい。
「衣装に着られてそうだね」
「大丈夫です。その傾国並みの美貌でこんなに豪奢な衣装でも霞んでしまっていますから」
「それはどうも。何でもいいからさっさと終わらせてー」
大変だと言いつつも手際よく着飾られていく。そんなルーはすでに準備を終えていて、普段と違う大人の姿に水の精霊らしい青が基調の衣装を身に纏っている。かわいい顔をしているのに、一度口を開けば全然かわいくない。クールすぎるんだよね。
会合は基本的に誰かと一緒に参加する。国王なら王妃と、皇帝なら皇后と。どちらかが参加できない場合は側近や宰相あたりと共に。だから俺はルーを連れていく。でもレンは一人で参加するって言ってたかな。
「俺が姿を見せても誰か分からないかもね、みんな」
「でしょうね。この国に住んでいる王以外はヴェリトアの皇帝陛下くらいしか分からないのでは? これは引きこもっておられたナギサ様が悪いですね」
「ごもっともで」
そっか、ジェソンさんの他にも魔王とエルフの族長は俺のことを知っているんだったね。いい印象どころか恐怖を植え付けてしまっているだろうけど。
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