61 責任とお世話
「承知致しました。…………前に殺された精霊と同じく、今回も僕の管轄下である風属性の精霊でした。監督不行き届きであったこと、心からお詫び申し上げます。謝罪してもしきれません。本当に申し訳、」
「いい。謝らなくていいよ。前回罰したのは呪いになったことが一番大きな理由でしょ。ランは違うよ。詳しくは後日、シーラン男爵家に行って話を聞こうと思ってる。聞いた話によっては罰する可能性もあるけど、今は謝る必要なんてないよ」
「……はい」
「それに……もし罰することになっても、今回は俺がシルフの分も請け負おうと思ってる。だって風属性はシルフの管轄下だけど、それ以前に精霊という時点でどの属性でも俺の子なんだから」
精霊の面倒を見るのは本来俺の仕事だから謝罪するべきはシルフじゃない。そして精霊が他種族に何かしてしまった場合、最高責任者は精霊王だから謝罪するのは俺。ないだろうけど、ランが他の種族になにかしてしまって返り討ちに合ったという可能性もある。その場合はどんなに怒り狂いそうでも、俺は謝罪するしかない。
前にシルフを罰したのはけじめを付けるためだったから俺だけでなくシルフにも罰を与えたけど、今回はその必要はないと思ってる。
「納得してなさそうな顔だけど今は我慢して。俺は会合の準備してくる。────アリス、約束はちゃんと守るから安心してね。エルサちゃんも心配してるかもしれないから早めに帰るんだよ」
「そのことだけど、ナギサ? やっぱり私もまだ心配だから今日はお世話させてよ」
「そうですね。エルサには僕から連絡を入れてありますし、心配はしていないはずです」
「え……」
それはちょっと、お断りしたいかもしれない。もちろん心配してくれてるのは本当なんだろうけど、アリスの目が少し輝いてる気がする。それを見ていると嫌な予感しかしない。アリスの傍にいられるのは嬉しいんだよ? だけど『倒れていたんだから安静にしてて』とか言って好き勝手遊ばれそう……
「ナギサ……迷惑かな?」
「……その顔ずるくない? 俺が弱いこと知ってるでしょ」
「今日だけ! だからいい?」
「はいはい、アリスの好きにしてくださいな。その代わり自分のやったことが返ってくる可能性も考えておいてねー」
最終確認のつもりで言ったのに、嫌がるどころかアリスは嬉しそうにしてる。意味が分からない。これだとアリスしか得しないじゃん。まあ……それでもアリスが喜ぶならいっか。未来の自分くらい犠牲にしてあげよう。
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