60 精霊王の目覚め
「えっとー……シルフ、ちょっと来て」
「────ナギサ様!?」
「おはよ。心配かけちゃったかな? ごめんね」
「も、もう大丈夫なのですか? まさか一晩で目覚めるとは思いませんでした」
無事に仲直りすることができて安心しているとアリスに言われた。『お父さんも含めて、精霊様達が心配してたよ』、と。アリスに言われて思い出したけど俺、ついさっきまで意識を失ってたんだよね。アリスとの話が心臓に悪すぎて本気で忘れてた。
心配も迷惑もかけてしまっているだろうと思い、一旦シルフだけ呼び出すと一秒も経たずに姿を見せた。
「大丈夫、どこも不調はないよ。今日は会合二日目だからもう少ししたら行ってくるね」
「ご無事で何よりです……が、会合は僕が代わっても構いませんよ? よく体を壊されるので不調を隠すことにも慣れておられるでしょう? そんなナギサ様の大丈夫という言葉ほど信用ならないものはないと思っていまして。いつ目を覚ましてくださるかも分からなかったので、僕が代理で参加するという話を他の大精霊ともしていましたし」
「体を壊しがちなのは否定しないけど……そこは信じてよ。本当に大丈夫だから」
今回は自分で参加するって決めていた。それに急に倒れて迷惑をかけただろうに、さらに忙しくさせるのは申し訳ない。
「……分かりました。ですが無理はなさらず。それと、アリスに最後に伝えた言葉から予想すると倒れた理由に心当たりがあったようですが、なぜ倒れたのか教えていただけないでしょうか?」
「んー……やだ。でも近いうちに教えてあげるよ」
もう少ししたら黒幕との最終決戦について精霊や関係者と話し合いをしたいと思ってる。それぞれ忙しいから予定はまた決めないといけないけど。
別に今言ったら駄目なことではないんだよ? だけどさ、俺が取り戻した記憶は仕方ないのかもだけど、本当に最低でクズとしか言いようがないものだから今は黙っていたいかな。
「そうですか。では僕は他の精霊にもナギサ様が目覚めたことを伝えておきます」
「口止めはしてくれてた?」
「はい」
「ありがと。じゃあよろしくねー。それと、エリオットくんにもお礼を言っておいてくれない? ランのこと……気付いてくれてありがとう、って」
アリスにはもうお礼を言ってある。二人が気付かなかったなら俺の元に情報が届くのにもう少し時間がかかっただろうし、その頃には騒ぎになっていたかもしれないから。
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