54 会議嫌いは
「───じゃあ例の件については最終日で良いんだね?」
「うん。でも予定は大丈夫なの? レンに話がある人はたくさんいると思うんだけど」
「それは先約にナギサ様がいるって言えば断れると思うよ。精霊王を押し退けてまでする話は中々ないんじゃないかな」
「君が良いなら俺はそれで構わないけど……皇帝なんだから俺ばっかり優先しちゃ駄目だよ? 協力要請した側の俺が言うのも何だけど」
あの後少しだけ世間話をし、明日は話し合いがある日だからそろそろ解散しようという話になった。
「もちろんだよ。だけど多少無理してでも友人を優先したい気持ちはあるからね。……話しかけてくる人がいてもどうせ碌な話じゃないことは分かってるし」
「彼らは彼らで必死なだけだよ。俺が予言してあげる。明日、会議後にレンの三日目の予定を聞く人が三十人は出てくるね」
「たしかに毎年それくらいかも。そうなったらナギサ様は助けてくれるのかな?」
「俺は高みの見物をしててあげる。レンはどうやってあしらうのかな、ってね」
助っ人に対して俺の言ってることは性格が悪い自覚あるよ? だけどそんなの今更だからねー。中々見ることのないレンの皇帝としての振る舞いを楽しく眺めていようかな。
「皇帝としての振る舞いと言えばシルフに聞いたんだけど、今年はジェソンさん……ティルアード国王とレンが主に会議を仕切るんだったっけ?」
「そうだよ。発言力的にもそうだけど、開催国であるティルアードの国王陛下は毎年取り仕切る立場だからそれは今年も同じ。そしてもう一人の進行に私が選ばれたのは、ナギサ様が参加するからだよ」
あー……なるほどね? ジェソンさんには俺がレンと親しくしていることを前に言ったから、俺を制御するにはレンが最適だと考えたわけか。良く分かってるね。
「納得したよ。安心して、俺は最初から最後まで基本的には傍観者のつもりでいるから。どうせ俺が混ざっても遠慮合戦でまともに話し合うこともできないだろうしねぇ」
時間をかけて準備してきたものを、俺一人の存在で台無しにしたくない。そしてなにより、長々とした会議はめんどくさいから大嫌い。本当に。心の底から。
適当な理由をつけて父さんから仕事を押し付けられていた俺が、唯一毎回逃げて受け入れなかったのがこういう大規模な会議だからね? 自慢じゃないけど、俺の会議嫌いは世界一だと思う。
「言葉の端々から本音が透けてるよ?」
「それはごめん。つい」
「気持ちは分かるけどね」
良かった。レンも俺の仲間だった。これも中々いないだろうけど、もし会議が好きとか言い出したら俺の敵になるところだったよ。
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