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【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?  作者: 山咲莉亜
第3章 動き出す思惑

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36 悪女の素質

「あのね、そこはナギサと比べられては困るんだよ」

「ひどいねー」

「書庫に行って何するの?」

「もうすぐ世界各国から代表者が集まって会合があるでしょ? ルーが言うには会合ってその一年の出来事の報告会みたいな感じらしいんだよ。だから使えそうな資料を探しに行くの」


 誰かが良い感じに一年間の出来事をまとめてくれてたりしないかなーって思ってたけど、たぶんあるよね。大精霊がそれぞれ自分たちの属性の精霊が関わることはまとめてくれているはず。

 だから俺の仕事は、そこに書かれていないことを会合までにまとめておくことだね。黒幕のこととか、言えないこともあるけど曖昧になら伝えられることもある。


「そっか、頑張ってね。それで本題に戻るけど」


 あ、忘れてなかった? 実はアリスが『自分で言うのは恥ずかしい』って言ったあたりから想像はついてるんだよね。俺のことを恨めしそうに睨んでいたからさ。


 でもギリギリまで粘ろうと思う。だってその方がアリスの反応が見れて楽しいじゃん?


「あの日、私が起きたらナギサはもういなかったんだよね。私も帰らないと行けないから身支度を整えていたのですよ」

「うんうん」

「……最後にもう一度聞くけど、本当に心当たりはない? 正直に言えば許してもいいよ」

「すみませんでした」

「うん、だよね」


 俺が宮を離れた日。あの朝、俺はアリスにちょっと触れさせてもらったんだよね? 何をしたかと言うと首筋に鬱血痕……まあ、いわゆるキスマークを付けた。それだけなんだけど、首筋だと目立つから困ったんだろうねー。


「弁明させてもらいたいんだけどいい?」

「どうぞ」

「あの日、俺と出かけてたでしょ? その時にアリスが絡まれていたからさ。俺がいない間に同じようなことになったら嫌だなぁと思って」


 キスマークを付ける人の心理って、愛情表現はもちろんだけどその相手への独占欲や周囲への抑制のためでもあるらしい。俺はずっと言ってるよ、『愛が重い』ってね。俺基準だから他の人からしてどうなのかは分からないけれど。


「それから弁明する側の態度ではないけど、アリスだって本気で嫌がりはしないでしょ? 俺はアリスが本当に嫌だと思っていることは絶対にしないからね」

「……それはそうだけど。ナギサってたまに私より私のことを理解してそうだよね」

「そんなことないよ。で、許してくれる?」

「いいよ。正直に言えば許す約束だからね。でも一つだけお願いしたいことがあるんだけど良いかな」

「ん?」


 アリスのお願いなら全力で叶えさせてもらう。許してはくれたけど困らせちゃったお詫びのためにもねー。


 そう思って聞き返すと書庫へと向かう足を止め、少し逡巡したあとにわざわざ背伸びして俺の耳元で囁いてきた。


「今度は首筋の、隠せるところに付けて?」

「君ね……悪女の素質があるんじゃないの?」

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