35 用意周到
「心配かけちゃってごめんね、アリス。見ての通り俺は一日中眠っていたから完全に回復してるよ。それに王としての責任やアルフォンスくん───王太子殿下を大事に思う気持ちもあるから。責任はともかく、自分の大事な人くらいは守りたいよ。俺にそう思わせてくれる人は貴重だからねー。大事な人のためなら俺は命くらいいくらでも懸けられること、アリスは知ってるでしょ?」
だから辛いのくらい我慢できる。心が壊れてしまって感情が薄い俺の、最も大きな感情が愛なんだから。愛の種類は色々だけど自分の大事な人だけは絶対に裏切らないしね。
「本当に大丈夫なの? 私、ナギサの『大丈夫』はあまり信用しちゃ駄目なものだと思っているけど」
「今回は信じてくれて良いよ」
「そう? じゃあナギサ、また倒れちゃったら大変だしあなたは無理をする癖があるので、しばらくの間魔法の使用禁止令を出します」
「無理はしないよ? 俺から魔法を取ったら何が残るのー」
何とか説得できない? 魔法が使えないと不便で困るんだけど。勝手に使えば良いじゃんって話だけど、すごく心配させてしまっていたのは分かってるからあまり強く出られないんだよねぇ。俺は愛する人に弱い自覚がある。アリスが怒るのは珍しいから尚更。
俺の言葉に『残るものはたくさんあるでしょう』と呆れていたアリスだけど、次に倒れる寸前まで無理をしたらアリスの言うことを聞くからと言って食い下がると、今回だけだと許してくれた。やっぱりアリスって基本的に俺に甘いよねー。
「じゃあ次、本当に心当たりはないの? 恥ずかしいから私に言わせないでほしいんだけど」
「言わなくても良いよ? 俺としてはその方が助かるしねぇ」
「んー! 今はお触り禁止ですっ!」
「えー」
一瞬嬉しそうにしてたのにね。別に頭を撫でるくらい良くない?
「アリス、話はちゃんと聞くから書庫に行こうよ。移動しながら話そ?」
元々俺が火の宮に来たのは禁書室に入るための魔力を回復するため。幸い、禁書室だけはすべての宮と繋がってるからここでも調べ物はできる。
「分かった」
「そういえばアリス。今更だけど家に帰らなくて大丈夫なの? 夜なんだよね?」
アリスがいつからここにいたのかは分からない。アリスはどの宮でも好きな時に入れるようにしてるから。だけど俺が起きた時、アリスは夜の七時って言ってたんだよ。
危機管理ができる年齢ではあるけど、女の子がこの時間から一人で帰宅するのは危なくない?
「帰るなら俺が送っていくよ? 話ならまた後日聞くし」
「大丈夫だよ。ナギサのところに行って来たら? って言ってくれたのはお父さん達だからね。だから今日は宮に泊まって明日はそのまま学園に行くことになると思う、って伝えておいたの」
「毎度思うけど用意周到だね。俺とは大違い」
俺がアリスの立場なら親に無断で泊まるか、そうなることが決まってから連絡入れてると思う。俺達は性格的に似ている部分が多い。でもこういうところは全然違うね。
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