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【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?  作者: 山咲莉亜
第3章 動き出す思惑

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34 二つの罰は愛ゆえの

「ん……は、え?」

「おはよう。良く寝たね?」

「今何時?」

「七時だよ」

「朝の?」

「夜の七時に決まってるでしょう」


 びっくりした……丸一日くらい眠ってたのかな。思ったより体が限界だったみたい。


 それはそうと、なんでアリスがここにいるんだろうねー。『良く寝たね?』じゃないんだけど。


「うーん……とりあえずお久しぶりです」

「お久しぶりです。無事に帰ってきてくれて安心したよ。……ううん、無事ではなかったね」

「え? なに、怖いんだけど」


 寝起きであまり頭が回っていないから迫ってこないでほしい。俺、アリスに何かしたっけ? それに無事ではなかった、って………


「なんで私がここにいるのか、疑問に思っているでしょう? 教えてあげるよ」

「いや、遠慮しておきます。結構です」

「なんで?」

「自分の顔を鏡で見てよ。目が笑ってないし……」


 絶対何かに怒ってる顔なんだよねぇ……ほんとに怒られるようなことをした覚えはない。少なくとも俺に心当たりはない。

 怒ってる顔もかわいいよ、なんて言えたら良いんだけどね。アリスの場合、かわいいのは言うまでもないんだけどそれ以上に恐怖感が勝る。この顔は俺にとって都合が悪い。絶対。


 普段穏やかな人ほど怒ると怖いって良く言うよね。アリスはその代表的な例だと思う。


「私はナギサに言いたいことが二つあります。罰として三日間お触り一切禁止の方と、少しの間緊急事態を除いて魔法使用禁止の方。どちらから聞きます?」

「え……どっちも無理」


 久しぶりに会って触れるの禁止は絶対無理。一旦抱きしめさせてほしい。あと魔法が使えないのはいろんな意味で困る。


 そもそも俺は教えてほしいなんて言ってないよ。


「あの、もしかしてどっちの罰も受けないといけない感じ?」

「当たり前」

「……あれ、おかしいなー。ちょっと耳が遠くなったかも」

「耳元で叫んであげようか」

「やめて」


 怖いって。笑顔で言うことじゃない。でも罰を聞かされてから何となく言いたいことが分かったような気がする。


「ナギサが疲れているのは私が忍び寄っても起きない時点で分かっているから簡潔に言わせてもらうね」

「はい」

「……大丈夫だった? 魔力も体力も倒れる寸前まで消費したってお父さんに聞いたよ。呪いについて、私は詳しくないけど穢れがすごいだろうから精神的にも辛かったんじゃない? 私に教えてくれた時、お父さんの顔が引き攣っていたから、それだけ無理したんじゃないかと思ったのだけど」


 なるほどね。なんでアリスがここにいるのか疑問だったけど、シルフが説明したんだ? それで心配して様子を見に来てくれたんだね。僅かな怒りと心配が混ざったこの表情を見るに、アリスがシルフに問いただしたんだろうなぁ……


 これは迷惑になるだろうからと帰ってきてすぐに会いに行かなかった俺が悪いね。ずっと心配してくれていただろうに。黒幕のお兄さんと対面したことに限らず、危険なことはたくさんあったからそれも知られているよね、きっと。これではアリスにもシルフにも文句なんて言えない。

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