30 呪いの根源を
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どれだけ浄化しても呪いの根源を浄化しなければ意味がない。針の穴に糸を通すような繊細な力の制御でアルフォンスの中に巣食う呪いを探る。
結界の外では体力と魔力の限界から震える手で泣きそうになりながら結界を張り続けるウンディーネと、彼女が倒れないように支えるシルフ、そして不安そうに見守る国王やルーの姿があった。
ナギサにその気がなくとも、膨大な魔力は常に暴走しようと結界を壊しかけている。まるで普段ナギサの中で起こっている状況を視覚化しているようだ。
そしてナギサはそんな外界の状況にすら気が付けないほど集中していた。着々と時間は経過していき、同時に体力や魔力も減ってくる。その分ウンディーネの負担は小さくなるが、ナギサの顔には目を閉じていても分かる焦りが浮かんでいた。
そんなナギサの様子を見ている周囲も緊張が高まっていく。
「……あった」
もう駄目なのではないかと誰かが諦めかけた時、ナギサが小さく呟いた。ようやく呪いの根源を見つけたナギサは一気に魔力を送り、ほんの僅かにも残ることがないように呪いを浄化した。そのまま体内に広がった呪いも浄化し、完全に呪いが浄化されたことを確認したナギサはそっと目を開け、息を吐く。
「はは……終わったよー……」
言葉と同時に倒れかけたナギサを大人の姿になったルーが支える。魔力はほとんど残っておらず、体力もゼロに等しい。支えられるままルーに身を任せ、疲れたと言わんばかりに目元を片腕で覆う。シルフは同じく限界で倒れたウンディーネを抱えてナギサの傍に移動した。
「ウンディーネ、ありがとね。助かったよ」
「うん……」
「どれくらいの時間が経ったんだろ……」
「軽く一時間は超えていますよ」
「……それは嘘でしょ。盛り過ぎじゃない?」
ルーの言葉で時間を確認したナギサは本当にそれくらいの時間が経過していたことが分かって絶句した。いくら何でもこれほど時間がかかるとは思っていなかったのだろう。
「あー、えっと。アルフォンスくんの呪いはもう浄化できたからね。大丈夫だと思うけど何かあれば俺に言って。俺は疲れたから今日はもう帰るよー……」
「はい。いつも本当にありがとうございます。私にも何かできることがございましたら何でも協力致しますので」
「ありがとう。今はさっきお願いしたことだけで十分だよ。アルフォンスくんはもう少ししたら目覚めると思うから、後のことはよろしくー」
一礼した三人は、残った僅かな魔力を使って水の宮に転移したナギサの後を追うように去って行った。
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