29 自分の持てる最大限の力を
「ナギサ様ぁ……お話中に申し訳ないけどそろそろ限界だよぉ……」
「魔法は本当に少ししか効いてないので魔力だけが減っていくのですが……」
「ごめんね。もういいよ」
うーん……浄化しないといけないんだけどさ? さすがに今この場で済ませないといけないと思うと始める前から憂鬱になるんだよねぇ。
やるしかないし、早い内にどうにかしなきゃなのは分かってるんだけど。
「───よし、さっさと終わらせるよ。みんな離れて。ウンディーネは俺の祝福を持ってるよね? 頑張って俺とアルフォンスくんに結界を張ってて」
魔力を抑えた状態ではとても浄化しきれない。だけど抑え込んでいた魔力を解放すると恐らくこのあたりは吹っ飛ぶ。
体力も魔力も限界なのは見て分かるけど、俺も魔力を貸してあげる余裕はないから枯渇しない程度に頑張ってほしい。
「アルフォンスくんだけなら俺も守れるから」
「わ、分かった……」
「ウンディーネ、無理はしないでくださいよ。支えるくらいなら僕もできますから」
シルフへの祝福は剥奪したままだからね……
順番を間違えたら即アウト。爆弾の解体のようなものなんだよね、一度に呪いを浄化するのって。俺も初めてのことだからちょっと緊張する。俺らしくもないけど大勢の命が懸かっているから。アルフォンスくんはもちろん、少しでも失敗したら俺も魔力が尽きて死ぬ可能性がある。そうしたら今度は同時に多くの精霊が死んでしまう。大変だよ、そんなことになったら。
「いいよ、ウンディーネ。結界張って」
「うん」
「………いくよ」
ウンディーネによって強固な結界が張られたことを確認し、少しずつ普段抑えている魔力を解放していく。扇もなしに魔法を使うのはいつぶりだろうね。扇は魔力貯蔵庫のようなものだから、普段溜めている分の魔力も一気に使うとなると制御が大変だけど……
一度大きく深呼吸をし、寝台で眠るアルフォンスくんの隣まで移動して片膝を付く。アルフォンスくんの手を両手で握って目を閉じ、少しずつ彼の体に魔力を注いだ。これは普通の魔力ではなく、俺の体内ですでに浄化してある魔力。浄化魔法をかけるよりも浄化済みの魔力を注ぐ方が効果が確実。ただ、普通の浄化魔法よりも俺への負担は大きくなる。
正直、この規模の呪いを一度に浄化するのは本当に辛いんだよね。だけど俺は大切なものを守るためなら何でもできる。自分の持てる最大限の力を発揮しよう。
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