27 『精霊王の涙』の力
「後からの方が落ち着いて話を聞けるかもしれないけど、それだとたぶん俺が話せる状態じゃないと思うから先に今後のことを話すよ」
この呪いを一度で浄化しようと思ったら相当な量の魔力を消費する。浄化の舞は大変すぎてそう何度も舞えるものじゃないから、今回は一度に浄化しきるしかない。倒れるほどの消費ではないはずだけど分からない。呪い自体中々ないからさ。他の魔法と比べて分かっていることが少ない。
不安そうな彼に俺が責任を持って浄化するから安心して、と伝えるとホッとしたようにいつも通りの冷静そうな顔に戻った。こうして俺の言葉を信じてくれるあたり、俺はジェソンさんからかなりの信頼を得ているんだろうなと思う。ちょっと嬉しいよねぇ。
「これ、君は何か知ってるよね?」
「『精霊王の涙』、ですよね」
「そう。どうしても使わないといけないようなことがあれば使って。これは宝石だけど万能薬でもある。怪我や病気、呪いにも効果があるんだよね。だけど二度以上の摂取は致死量になるから最終手段にしてよー」
これを今飲ませれば『再発』した呪いも浄化される。だけど今使ってしまったら今後俺の手が届かない状況で同じようなことが起こった場合、静かに死を待つことしかできなくなる。だから今回は俺の手で浄化しなければ。
「……このような貴重なものをいただいてもよろしいのでしょうか?」
「俺が渡してるんだから良いんだよ。だけどシュリー家に感謝しな。俺が前にあげたやつを大切に保管してくれていて、今回はそれを返してくれたんだから」
恐らく巻き込むことになってしまうから、俺と親しい人の家族や協力者には黒幕のことを軽く話してある。シュリー家にもこの話をした時に役に立つことがあるかもしれないからと返してくれた。
あの時気まぐれとはいえ、彼らに渡さなければとっくに使ってしまっていたと思う。それか捨てていただろうねー。だって自分の涙からできた宝石なんて持っていても恥ずかしいだけだし……
「シュリー公爵家ですか? ああ、交流があったのでしたね。そういうことでしたら、ありがとうございます」
礼をしておきます、と頭を下げられる。俺には礼をしろとは言ってないんだけどねー……まあいいや。
「本格的に黒幕が迫ってきてるね……あのさ、お願いがあるんだけど」
「はい」
「俺が黒幕と対面した時。初対面ではあるだろうけど、それが最終決戦になるように進めるからさ……国民を巻き込むことになっても許してくれる?」
「それは……ナギサ様でも許すことはできませんね。私は国王なので民を守る義務があります」
「分かってるよ。でも黒幕との対面はこの国である方が俺にとって圧倒的に有利なんだよね。その代わり、たったの一人も死なせない。怪我もさせない。厳密に言うと怪我はさせちゃうかもしれないけど絶対に治すと約束するよ」
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