15 鋼糸
「恐らくお前の予想している通り、ただ偵察に来ただけだ。運良く倒せたりしないかとも考えたがそう簡単にやられる相手じゃないと分かって安心した。一瞬で死なれては困る」
「そう。で、君達の背後にいるのは誰?」
「だから簡単には教えられないと言っただろう? だがそうだな、俺と戦ってくれたら話しても構わない。お前の強さを知りたいからな。こちらも危険を犯してまで接触したのだから少しの情報くらい持ち帰りたい」
……何を考えているんだろうね。自分で言うのもなんだけど俺は精霊王だよ? 強いのは分かりきっているはずなのに、勝算でもあるのかな。
「俺が君を殺すとは考えない? 俺としては厄介そうだからここで殺してしまうのが一番楽なんだけど」
「それは困るな。だがお前の言う『黒幕』の正体を知っているのは俺だけで、天下の精霊王でも自力で探り当てようと思うと数年はかかるぞ?」
「それはすごいね。いいよ、じゃあ契約ね」
契約魔法を発動すると俺と彼の手の甲に魔法陣が刻まれた。俺が勝てば黒幕の正体を話す。負ければ大人しく引き下がる。俺にとって不利益はない。強いて言うならこちらの戦力を少し知られるくらい。契約を破れば罰を受ける。
「致命傷を与えるのは禁止、お前の魔法で治せる範囲ならいくらでも攻撃可能。どちらかが動けなくなるか降参したら終了で範囲はこの結界内のみ。ルールはこれで良いな?」
「うん。ちなみに俺は生きてさえいればどんな傷でも治せるから。好きなタイミングで来て良いよー」
一応教えてあげると見るからに面白がってる顔になった。どんな性格しているんだろうねぇ……ちょっとヤバそう。普通に引く。
「そう言うことなら遠慮なく」
「鋼糸……? っわ、これ危ないね」
糸使いなんて初めて見たんだけど。これ、結構強いし細くて透明で見えづらいし。俺は視力良いから全然見えるけど俺じゃなかったら避けるだけで手一杯になりそうだねー。
「ほら、そっちからも来ないと。俺は手加減しないぞ」
「俺もあまりルーを待たせたくないからできるだけ早く終わらせるよ」
「へぇ……」
俺は普段やる気なさそうに見えるだろうけどやる時はちゃんとやるよ? それにこの人……名前は知らないけど彼は恐らく俺が今まで戦ってきた人の中で一番強いと思う。世界や精霊を除いて、だけど。あまり長引かせたら駄目な気がするんだよ。時間を掛ければかけるほど俺が不利になりそうな予感してる。
「三、二、一……」
シュルシュルと、なんて可愛いものではなく金属がぶつかり合うような鈍い音を立てながら攻撃してくる。相変わらず余裕そうな表情で攻撃を仕掛けていた彼だけど、俺のカウントダウンを聞いて目を見開き、急いで自身を守るように鋼糸を何重にも囲った。
その直後、彼のいた場所には無数の氷柱が突き刺さった。
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