14 赤髪黄眼の彼
「……いつまで黙り込んでるつもり? 君は操られてないよねぇ」
「バレたか。なぜ俺だけ連れ出した? 俺を捕らえたところでどうにもならないぞ」
「それはやってみないと分からないじゃん。なんか色々知ってそうだから単刀直入に聞くけど、黒幕───君達の背後にいるのは誰なの?」
炎のような真っ赤な髪に黄色い瞳という少し珍しい容姿の彼、黒幕と繋がっているであろう人物をあの場から連れ出し、ルー達のいる場所から少し離れたところに転移した。この人も俺のことは知っているだろうに、焦る様子も危機感も感じない。むしろ余裕そうなくらい。何を隠しているか分からないから俺は注意しないといけないね。
「そう簡単に言うと思うか?」
「まあそうだよね」
「先に聞かせてほしいことがあるんだが、俺を連れ出した理由はなんだ? 俺はあの中でも一番弱い自覚があるぞ。それとも、弱いからこそか?」
「いや、まず君は弱くないでしょ? 黒幕は君を操るわけにはいかなかった。だから本当は強いけど弱いふりをさせた。最初から弱いふりをしておけば何度攻撃されて倒れてもおかしくない。わざわざそんな面倒なことをしてまで俺に接触してきたということは、君は黒幕にかなり近い存在。そう考えるのが自然だよねぇ」
黒幕の側近が弱いなんてことはないはず。何が目的なのかは知らないけど、考えるだけ無駄だと思う。こうして敵対している以上、俺がこの人達の考えを理解するのは不可能に近いからさ。
俺の言葉を聞いた赤髪の彼は満足そうな表情を浮かべ、俺の目の前まで歩み寄ってきた。
「へえ? 俺が強いと分かっていても逃げないのか」
「今のところ殺気を感じないからね。何の目的で俺に接触してきたの? 俺がそっちに手を出そうとしたから?」
「見れば見るほど綺麗な顔だがどんな親から生まれればこうなるんだ? 精霊王に親などいないか? 黒髪に青眼というのも珍しい。それはそうと……お前からは殺気しか感じないな。隠す気もなさそうだ」
「何の目的で接触してきたのか答えてよ」
「まあまあ、そう焦るんじゃない。ゆっくり話でもしよう。そうだな、例えば……お前の愛する婚約者のこととか」
「───目的を話せ。俺の問いに答えろ」
意味深に顔を覗き込み、俺の顔に触れながら笑みを浮かべる目の前にいる男の手を一旦振り払い、万が一のことがあっても大丈夫なように周囲に結界を張った。
俺はアリスを祝福しているし、精霊の護衛もいて本人も戦える。だからそんなに心配してはないんだけど想像以上に敵の口からアリスの名前を聞くのは不快だった。そりゃあね、俺が狙われているんだからアリスのことも知られているだろうと思ってたよ? それでも嫌なものは嫌なんだよ。
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