10 彼らの目的は
「ああ。それにお前は何を仕出かすか分からないからな。人質に取られている家族でさえも俺に売ってしまうかもしれない。それはそれで面白いが、精霊王を倒すにはあの男の傍にいることが多いお前の協力が必要不可欠だ。できることなら最後まで大切に利用させていただきたいところだな」
「僕より彼のことを知っている人もいますけどね」
「お前が一番ちょうど良いんだ。精霊王に近い者ほど守りも堅い。例の溺愛されている婚約者なんて昨日から彼女に危害を与える可能性のある者は近付けなくなっている。さすがにあの護りに突っ込んでいくことはできないだろう? それに彼女の家族は俺でも簡単に手を出すことを躊躇うほどに強く、彼女自身も精霊王の祝福を受けている」
それは当たり前だろう。あれだけ溺愛していて、この危険な状況の中傍を離れることになったのだから彼女を誰よりも堅く守ろうとしない方がおかしい。
「あなたは精霊以外に危害を加えるつもりはなさそうですね? 他人の家族を人質にとって僕を協力させようとはしますけど、ある程度質問には答えてくださいますし傷一つ付けられていません。何か理由でもあるのですか?」
「俺達の目的は精霊を……というより、精霊王を殺すことだけだからな。精霊はあの男を狙うなら必然的に倒すしかないから仕方ないが、関係のない者を傷付けるつもりはないぞ。無論、精霊王と戦う際に巻き込まれた者はどうにもできないがな」
無関係の者を自分から傷付けるつもりはないらしい。今まで精霊王に関することで起こした事件などについても聞いたが利用した者は相応の理由があった人だけだそう。そこまでして精霊王を殺したいのだから恨みでもあるのだろうが、それを聞いたところでどうにもならないのでわざわざ聞くつもりはない。
「できれば僕の思考は操らないでいただきたいですね」
「そうだな、俺を裏切らないのなら別に構わないぞ?」
「分かりました。元よりその約束ですし」
「ああ。ただ、少しでも怪しい動きが見えたらすべてが片付くまでお前の思考を操らせてもらうからな」
ご覧頂きありがとうございます。よろしければブックマークや広告下の☆☆☆☆☆で評価して頂けると嬉しいです。




