3 バレなければ
「この世に何でもかんでも話す馬鹿正直な人間がいると思いますか? 特に自分に都合が悪いことを自ら話す人は中々いないでしょう。あなたも分かっているのでは? 世の中隠しごとだらけです。それが普通です」
「つまり?」
「バレなければ良いのですよ」
「……うん、言うと思ったよ。こういうことはナイジェルの得意分野だしね」
「ええ。でも大丈夫だと思いますよ。万が一のことがあったら精霊王が責任を取ります。私ではなく」
そう、俺が。ナイジェル・シーランではなくね。もしその人の言うことの方が正しかったとしても、精霊王に喧嘩を売るような行為を誰がするかな? 余程の理由がない限り誰も俺を敵に回そうとは考えないはずだよ。みんな自分の命が惜しいんだからさ。馬鹿は喧嘩を売ってくるけどー。俺は無駄な時間を使いたくないから自分の使えるものはすべて使う主義なんだよ。
「クレア、ナイジェルに何を言っても論破されるだけですよ。それに、ここに来たのも自分で調べるより手っ取り早いと考えただけで自分でも調べられるのだと思います」
「だろうね……薄々勘付いてはいたよ。何かあったら責任は取ってもらうよ」
「もちろんです。ありがとうございます」
さすがにそこまでは迷惑をかけられないから、それに関しては重々承知の上だよ。
「それで、その書庫はどこにあるのですか? 王城内には見当たりませんでしたが……」
「地下だよ。目隠しの魔法が使用されているから簡単には見つけられないかもしれない。案内は必要かい?」
「いえ、それだけ教えていただければあと後は自分で調べます。お礼はどうしましょう?」
「いらないよ。その代わり、これからも仲良くしてくれると嬉しい」
「それはもちろんです。ありがとうございました。私はこれで失礼します」
何かあったらランに助けてもらうんだよ、と二人に声を掛けてランに魔力を分け与える。ランは中位精霊の中でも強い方だから必要ないかもしれないけど一応ね。何かあったらきっとクレアちゃんの大事な人であるミシェルさんのことも守ろうとするだろうから。
精霊にとって魔力は命も同然。俺の魔力で回復してあげることはできるけど枯渇してしまったらどうにもならないから手遅れにならないように気を付けないと。
「魔法で隠されていたんだね。誰がやったのか分からないけど隠すことに特化した精霊がいるのかな?」
「これは……恐らくリーですね。集中して探ってみたのですが、僕の魔力も感じました」
「あ、そうなんだ。でもリーって誰にも祝福してなかった気がするんだけどな」
王城の地下に転移すると、たしかに分かりづらくも強力な結界を張られている部屋を見つけた。いつから張られてる結界なのかはわからないけど、だいぶ昔なら祝福してる人がいたのかもしれない。まあどちらにしても俺の魔力が源になっている以上、俺がこの結界を壊せないはずがないんだけどねぇ。
壊したら後で張り直さなければならないから、今回は壊さずに通らせてもらうけどさ。
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