103 甘えタイム
「不快でしかないから具体的にどんなことをされたのかは聞かないけど最後に一つ。……怖かった?」
「それは、そうだね」
「うん、正直に言えて偉いね。大変なことにならなくて良かったよ」
「……子供扱いしてない?」
アリスの手がずっと微かに震えてた。この様子を見るに、恐らく今までで一番悪質だったんだろうね。まあ女の子が知らない男に囲まれたらそれだけで怖いに決まっているだろうけど。でも場所と状況が悪かったね。精霊が気付いてくれて良かった。
「んー……子供扱いしていて、あんなキスすると思う?」
「なっ! そ、そうだった。なんであんなこと……!」
「それは虫除けと、単純にイライラしたから。嫉妬と言われればそれまでだけど」
「……恥ずかしかったんですけど」
「ごめんね。半分無意識だったから俺もちょっとびっくりした」
急に人前でするとは思わないよねぇ。でもあの時点で結構なことをされたのは分かっていた。やってしまったものは仕方ない。開き直れる立場ではないけど。
「まあ良いよ。それより……あの、そろそろ離れない?」
「やだ」
「えぇ……急な甘えタイム?」
「髪の毛サラサラだねぇ」
「ナギサが良く触ってきますからね。いつ触られても良いようにしているんですよ」
女の子ってすごいよね。なんでここまで手入れを頑張ろうと思えるのか……俺なんてモデルだったのに、最低限しか自分でやらなかったよ? ほとんど旭に任せてた。
誰もが同じわけではないだろうけど、それでも努力できるのはすごいよねぇ。俺も自信を持ってアリスの隣に立てるよう、少しは気を遣っているけれど。
「だとしても、ナギサには言われたくないですねえ」
容姿に関してはどこをとっても完璧だから世の女の子の敵だよ、とアリスが言う。そんなこと言われても俺は困るだけなんだけどね。モデルをやれる程度には整っていても、俺なんかより顔もスタイルも良い人はたくさんいるから。前世から俺の周りは顔が整ってる人ばかりだったけど、今世も周囲には美形しかいない。
この世界の生き物の遺伝子すごくない? 残念な感じの人の方が少ないよ。俺が見かけないだけって可能性もあるけど。
「どんなに綺麗な人ばかりでも俺が好きなのはアリスだけだからね」
「恥ずかし気もなく言わないで……?」
「だって本心だから。俺がどれだけあなたに魅了されていると思っているのですか、アリスさん」
「それはこちらのセリフですよ、ナギサくん」
あー、また言ったね。その呼び方気に入ったのかな? 楽しそうにしてるねー。
「あっ!」
「な、なに?」
俺は転移して宮に帰ってから、ずっと座ったままアリスを背後から抱きしめていた。だから急に大きな声を出された今、ようやくアリスから離れた。驚いて思わず離れちゃったけどそのままでいたかったなー。俺が離れたタイミングで逃げられたから我慢するけど。
「驚かせてごめんね? さっきのナギサの言葉を思い出しちゃって」
「ん? 俺何か言ったっけ」
「ふふふ」
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