102 代償は
「アリスも言いたいことは色々あるだろうけど、まずは俺の質問に答えて。どれくらいの間俺から離れてた?」
「十分以内くらいじゃないかな。人混みでナギサを見失っちゃったから一旦人が少ないところに移動しようと思ったんだけど、気が付いたら結構離れてしまっていました。ごめんなさい」
「理由は分かった。でもそんなに長い間離れてた……? 俺の体感では数秒だったんだけど」
「考えごとでもしていたんじゃない? ナギサ、本当に集中している時は周りの音が聞こえてないし時間の感覚もかなりおかしくなっているから」
そういうことか。それならアリスが声を掛けられて何かをされるくらいの時間は一応あったわけだ。
「分かった。じゃあ何をされたの?」
少し怯えていたよね。アリスの言葉によってはさっきの男達は永遠の眠りに付くことになる。さすがに外の人が多い場所でそこまでのことはしてないと信じたいけど、どうだろうね。
「怒らない?」
「どうかな。内容による」
「……じゃあ言わない」
「俺に言えないことなら今すぐあいつらをこの世から消してくるねー」
半分本気で言うと、焦りながら止められた。ちゃんと話してくれるらしい。
「少し過激な感じの……セクハラ、かな。ナギサが声を掛けてくれたからすぐに離れてくれたけど、人数的に囲ってしまえば周りからは見えなかったみたいで」
「よし、殺ってくる」
ふざけんなよ、クズが。ナンパかと思ったけどそのレベルじゃないよねぇ? 騎士団に突き出せば普通に捕まるはず。見逃すんじゃなかった。せっかく怒りが収まってきていたのに振り出しに戻ったよ。
「待ってまって! 大事になっちゃうよ!」
「別に良くない? 立派な犯罪じゃん。何より俺が我慢できない」
「私はナギサが助けてくれたから大丈夫だよ。ナギサが嫌だって言うなら上書きしてくれたら良いんじゃない?」
「それは元々そのつもりだった」
他人に触らせたままとか耐えられないから。俺も中々独占欲が強いかもしれない。どちらにしても嫌なものは嫌だ。
「……ルー、来て」
「はい」
「俺とアリスのために、あの男達に陰湿な嫌がらせしてきて。数日は絶対に」
「その人物は?」
「リーが知っていると思う」
「分かりました」
良いよね? これくらいは許されるでしょ。というか、これくらいのことは許してくれないと暴れるよ? そんな気持ちを込めて笑顔で頼むとルーは真剣な顔で了承してくれた。妻帯者として俺の気持ちは良く分かるんだろうね。
アリスも、『それくらいなら全然やっちゃってください』なんて乗り気で具体的にお願いしてるし。俺には落ち着けって言ってきたけど本当は嫌だったんだろうね。当たり前だけど。
嫌がらせはアリスを不快にさせた代償だよ。仲間想いな子が多い精霊に頼んだから相当堪えるだろうね。自業自得だから甘んじて受け入れな。
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