101 手を出すな
「きゃあっ!? ね、ねえ、大丈夫だから怒らないで!」
「うわっ、なんだ!?」
アリスは異性であっても多少触れられるくらいなら俺には何も言ってくれないんだよね。怒るのが分かっているから。黙り込んだってことは……そういうことでしょ。たったの数秒……いや、俺が気付いてなかっただけで数分かもしれない。少しの間だけ完全にアリスから意識を逸らしちゃったから。でもその短時間で何されたって言うの?
……自然と俺は繋がっている部分がある。だから俺の強い感情で自然が反応する場合がある。例えば今、本気で感情が乱れた一瞬だけ地面が大きく揺らいだ。つまり地震。
感情コントロールに慣れていて良かった。そうじゃなかったら大地震が起こってたよ。
「ふぅ……」
コントロールしてもまたすぐに怒りが湧き上がってきそうになるのでその前に浄化魔法を使った。こうすれば少しは落ち着く。我ながらどれだけ短気なのかと思えてくるけど、今回はアリスの反応がいつもと違ったから仕方ないかなー。
「俺は怒ってないよ。……じゃあ今度はお前達に聞く。アリスに何をしていた?」
「た、ただ声をかけていただけだ」
「へぇ?」
俺が誰か分かったんだね。態度で教えてくれてありがとう。でも俺はアリスに何をしていたのかを聞いたんだよね。
「……こっちを窺っている人が多いから今回は見逃す。次はない」
「は、はい!」
「ん!?」
「!」
「っ、ナギ……サ!」
ギャラリーが多いから見逃すけどさ、もううんざりなんだよね。前世と今世で合わせて何度同じ状況を見たことか。俺が見ただけでも両手足の指では全然足りないし、実際にはもっと多いだろうね。
「アリスは俺の婚約者だから。……俺の恋人に手を出してんじゃねぇよ」
「ひぃっ! も、申し訳ありませんでした!」
「金輪際俺達の前に現れるなっての」
立ち去って行ったのを確認して、きゃあきゃあと騒がしいこの場所から離れるべく転移魔法で地の宮に帰った。アリスには悪いけど人が多いからこそ、わざとみんなの前で彼女に口付けた。周囲は俺達のことを明らかに知っている反応だったし、すぐにでも噂は広がるだろうねー。
このことでアリスに怒られても良い。少しでもアリスを狙う連中が減るなら安いものでしょ。
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