100 一瞬の隙で
「ナギサってやっぱり変なところで嫌がるよね。ナギサの中にもちゃんと感情があったんだなって思うよ」
「機械じゃないんだからあるに決まってるでしょ。アリスって俺のイメージどうなってんの?」
「それは……ね?」
焦らさないでほしい。完全に楽しんでいるのだけは分かったよ。俺も人のこと言えないし、むしろこの良いのか悪いのか分からないところで俺達は性格が似ているからあまり強く言うこともできないんだよねぇ……
わざとらしく溜め息を吐いて見せるけど、アリスの笑みは深まっただけだった。傍から見たら立派なデートなんだろうけど、いざ会話を聞いてみると甘さもムードもないっていうことが良く分かると思う。俺達に恋人同士の理想なんて大抵当てはまらないんだよねー。
……というか、さっきから感じるこれって……
「……ん? ……っえ!?」
え、待って!? アリスどこ行った?
「王様、アリス様はあそこにいるよ!」
「ありがとう、リー」
「うん!」
いきなり出てきたことには言及しないでおこう。コソコソとみんなで俺達を尾行していることには最初から気付いてたしねー?
それはそうと、アリスは何してんの? 気になることがあったから一瞬目を離したけど、この数秒? の間に良くあんな遠くまで移動したね。こんな街中でアリスを一人にしたらいろんな意味であぶな───……うん、手遅れだった。
「……何してんの」
「あ、ナギサ!」
「あ、じゃないよ。こいつら誰?」
「……怒ってる?」
返答と状況次第では怒るかも。ただ、一瞬でも目を離すべきじゃなかったなって反省したよ。
まあ気持ちは分かるよー? 貴族はともかく、この国にいる全ての人が俺達のことを知っているわけじゃない。こんな綺麗な子が一人でいたら思わず声を掛けちゃうのは分かる。そこは百歩譲って良いにしても……この集団はなに? 六……七人か。
全員同じグループだったのかは分からないけど、これだけいたら一人くらいは気付いても良いと思う。アリスはネックレスも指輪もつけてる。女性としては普通のことだけど、デザインを見たら婚約者がいる証だと気付くはずだよ? ただのアクセサリーと、結婚指輪もといネックレスではデザインが違うんだよねぇ。
「知り合い?」
「違います」
「そう。で、何してたの」
こうして明らかにアリスの連れであろう俺が登場してもこの男達はここから離れる気がないらしい。俺のこと知らないんだね。珍しい。
俺がこういうことに慣れてなかったら絶対すぐに怒ってたよ。アリスからしたら日常茶飯事だから俺も一応落ち着いてるけどさ、俺も女性に声を掛けられることがあるから下心とか良く分かるんだよねー。で、こいつらは明らかに邪なことを考えてる。
話が通じなさそうな連中なのでとりあえず笑顔が引き攣らないように気を遣いつつ、簡潔にアリスへの質問を続ける。
「ナギサの元から離れた理由は後で話すけど、ナギサから離れた時に声をかけられただけだよ」
「おい」
「ふぅん……何かされてない? 大丈夫だった?」
「おい、聞こえてるだろ」
「…………」
あーあ。そっか、何かされたんだねぇ……殺す? こいつら全員。
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