98 デートとは
「デートとは」
「親しい男女のお出かけ?」
「これは?」
「私達流のデート!」
なるほどね。たしかに散歩デートってやつはあるけど、こんなことしてるのは俺達くらいかも。ある意味アリスの言ってることは正しい。
「俺達くらいしか楽しめなさそうだね。こんな老夫婦のようなデートはさ」
「私達が楽しいならそれで良いんじゃない?」
「まあね」
唐突に聞いたわけではない。アリスもずっと思っていたことだろうね。散歩デートなら気になったお店に入ったり色々と寄り道とかするんだと思う。でも今の俺達はひたすら話しながら街を歩き回っているだけ。俺を癒すための計画を立てたのだと、アリスは言っていた。俺は難しいことを考えずにできる限り無心でいられる時間が好きだから十分癒されてる。
それでも勇気あるなって思うよ。普通ならただ歩き回るだけのデートをしようとは考えないだろうし。
「なんでアリスは本当に散歩するだけのデートで俺が癒されると思ったの? あ、不満とかじゃなくて単に疑問に思っただけだから誤解しないでね」
「うん。ナギサって私と話している時……というより一緒にいる時かな? そういう時はリラックスしてくれてるように感じるんだよね。だから一緒にゆっくりできるのが良いかなと思って。……ちょっと不安だったんだけど」
「俺ってそんなに分かりやすい?」
「全然分かりやすくないよ。ただ、少しだけ声が優しくて表情も柔らかい気がして……自分で言うのは恥ずかしいんだけど……」
……なんだろうな。小動物を愛でる人が多い理由が分かったかも。アリスは小動物じゃないけど珍しく恥ずかしがっている姿がなんか……
「……可愛いね?」
「ど、どうしたの? 心臓に悪いからいきなりそんなこと言わないでほしいんだけど」
「可愛いものは愛でるべきだと思って」
「ナギサが急に何かを愛で始めたら世界が亡ぶよ」
「えー……」
それは大変だね。それなら俺は何かを可愛がることができなくない? アリスは俺のことをなんだと思ってるのかな。常々疑問に思っているんだけど、そろそろ聞いてみても良い……?
「大袈裟じゃない?」
「そんなことないよ。ナギサはね、いい加減自分の魅力を理解しないと本気で死者が出かねない。その場合、一番最初の死者は私になるかな」
「怖いこと言わないでよ。……ん? あれって……」
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