91 約束のご褒美
◇
「おはようナギサ!」
「朝から元気だねぇ。おはよ」
昨日、俺がしばらく消えるって言ったからその前にアリスが俺との約束を果たしてくれるらしい。その約束というのは魔法講義のご褒美としてデートしてくれる、って言ってたやつ。
俺のご褒美だからアリスがデートプランを立てるって張り切ってたね。一日彼女の時間をもらえるらしい。
「休日はいつものなんかすごい服じゃないんだね」
「なんかすごい服って……別に、いつもは平日でも休日でもあれだよ? セインくん達や精霊と遊びに行く時は目立つから着替えるけどね」
「今日服装が違うのはデートだから?」
「うん」
さすがに俺だってデートの時くらいはいつもと違う服にするよ? 別にあの『なんかすごい服』にこだわりがあるってわけじゃないし、むしろこっちの方が楽だし。
「こういう普通の服を着てるナギサを見るとモデル時代を思い出しちゃうね。すごくかっこいいよ」
「そう? 仕事の時と違ってメイクはしてないけど……ありがとね。アリスも可愛い」
「ありがとう。ナギサのメイクはしっかり写るためのものであって、本当に必要最低限だったでしょ。あれはほぼすっぴんだよ」
まあそれはそうなんだけど。でも服装によっては目元だけしっかりメイクしてる時もあった。何代も前に海外の血が入っているとはいえ、ハーフでもないのに青い瞳を持つ日本人は中々いない。だから瞳の色もあってか俺の顔って目元だけ少し冷たく見えるんだよね。……じゃなくて。
「そんなことより、今日の予定は?」
「ふふ、それでは今日のテーマを発表します。名付けて、『ナギサを癒そう。リラックス計画!』。これはお疲れであろうナギサにゆっくり過ごしてもらおうというプランでございます」
「おお」
良く分からないけど、とりあえず分かった風の反応をすると自慢気な笑顔になった。うん、可愛いんだけどね? ネーミングセンスが微妙と言うか何と言うか……アリスらしいね。
「ということで、まずは朝の散歩に行きましょうか」
「もしかして、この時間に集合にしたのは散歩のため?」
明るくはあるけどもう冬だし、少し寒い時間帯。アリスの家を集合場所にしていたけど王都でさえ人通りが少ない。冬のこの時間なら寝てる人の方が多いだろうなって感じ。
「そうだよ。ナギサは朝の静かな時間に散歩するのが好きだって何年か前に言ってたから、たまにはお話ししながら一緒に散歩しようかなと思って。ナギサはあまり心変わりしないからこの情報が更新されていることはないだろうと思ったんだけど、どうかな?」
「嬉しい。良く覚えてたねー?」
忙しくてあまり散歩に行く時間はなかったし、毎日行こうと思うほど大好きなわけではないけど、朝の散歩って静かで頭の中を空っぽにできるから落ち着くんだよね。たまにこうして散歩するのが好きなんだけど、この話をアリスにしたのは五年くらい前だった気がする。記憶力の良いお嬢さんだね。
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