81 雅の強さ
「よし、やるかァ」
「やっぱり不参加で良い? 面倒だからさ」
「完全に言い方が悪党なんだよね、お兄ちゃん。そしてナギサは気が変わるのが早すぎるよ」
これから死闘が繰り広げられるとは思えないほど自由だよね、とアリスが言う。残念ながら俺はそこまでの覚悟はしてないよ。どうせ負ける……とは思わないし、勝てるかもしれないけど、その可能性は限りなく低いから雅に再起不能にされる前に何とかしたい。
「二人とも準備は良い?」
「うん」
「ああ」
「では、勝負───始め!」
アリスの合図で一気に距離を詰める。雅は俺がどうするか分かっていただろうけど、雅に主導権を握らせたら駄目だからね。
でも……やっぱり、強い。ほんの少しの隙もない。距離を詰めても攻撃する前に雅が動き出すから何もできない。
「強いな」
「良く言うよ」
本当に強いのはどっちなのか、自分が一番分かっているだろうに。たったの一度も負けたことがない相手にそんなこと言っても説得力ないからね?
「ねぇ……今始まったばかりだけど、やっぱり空手以外も体術なら何でもありにしない?」
負けることが分かっているからというより面白くない。俺は空手だけ、柔道だけ、とか一つの分野に絞るより色々組み合わせて戦うのが一番得意なんだよ。普通はルールや技の違う競技を組み合わせるという、面倒な上に戦い辛いことはしないんだろうけど、俺は実践もあったからねぇ。試合じゃなくて実践。本物の命の取り合い。そんなのルールがどうのこうのって言ってる場合じゃないでしょ。だからそんなことしてる内に組み合わせての戦闘が得意になってしまった。
「それなら……うわっ! 容赦ないな」
「手加減したら瞬殺されるからね」
「それなら俺にハンデで魔法ありにしてもらう。俺は父さんの血の方が濃い……から、結構得意だぞ。何でもありのナギサに勝ち目はないからな」
「良いよ。ルール変更、俺は魔法なしで徒手空拳なら何でもあり。雅はそれに加えて魔法もあり。勝利条件は相手がリタイアするか、審判が続行不能と判断するまで。致命傷を与えるのは禁止。異論は?」
「ない」
雅の方が有利に聞こえるかも知れないけど、俺は雅……エリオットくんが魔法をどれくらい使えるか知らないからね。正直どの程度ハンデになっているか分からない。ただ、これくらいじゃないと俺に勝てるはずがないから彼は魔法もありにした。
こんな会話をしている間にも勝負は止まらず、すでに俺は二、三回やられかけている。雅お得意の回し蹴りはスピードと威力が尋常じゃないし、すごく正確に当ててくる。しかも確実に当たるタイミングを見計らって。このタイミングっていうのが絶妙だから受ける側からしたら堪ったものじゃない。
もちろん他の技も全て物凄い威力がある。その中でも回し蹴りは別格というだけ。空手の選手で一番強いのは黒帯とされている。だけど雅が相手になると、黒帯でも初段程度ならやられるまでに一秒かかるかどうか。実際に一秒以内に試合を終わらせているところを俺は見たことがある。自分で体験したこともある。あんなものを体験してしまったらもう恐怖でしかない。
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