76 深真雅
「はぁ……? 嘘でしょ? ねぇアリス、まさかとは思うけど……」
「……うん。たぶんナギサが考えてることで合っていると思うよ」
「ナギサもアリスも、俺を仲間外れにするなよ」
あーうん、信じたくない。気のせいだと思いたい。俺の予想が当たってたらおかしいからね!? 普通こんなこと起こらないから!
「どうしよ。俺が知ってる人にしか見えないんだけど」
「ナギサ、それは間違ってないでしょ」
まあそうなんだけど、そうじゃなくて。エリオットくんのことはもちろん知ってるけど。
「あのさ、エリオットくん。今から俺が言うことが当たってたら右手、間違ってたら左手を貸して」
「それ普通は告白とかでやるやつだろ」
「細かいことは良いの」
それは俺も分かってるから。握手するように手を差し出し、気のせいだと思いたいけど、気のせいではないであろうことを言う。
「エリオットくんは……雅?」
「正解!」
「ちょ、抱き着かないでくれる!? やめ、ちょっ……!」
「良く分かったな、ナギサ!」
本気でやめてほしい。エリオットくんの顔でその行動は。シルフ、エリオットくんの再教育をお願い! この人を今までのエリオットくんに戻してほしいんだけど!
「……雅。今すぐ離れないとぶっ飛ばす」
「やめろ。死ぬ」
「分かってるならやるな」
「冷たいな。せっかくお兄様と再会したのに」
「幼馴染なだけで兄じゃないでしょ。っていうか雅、なんで死んだの? 何歳で死んだの?」
「ストレートだな」
当然でしょ? だって俺は知っているんだよ。雅に遠慮したら駄目だってね。遠慮したらすーぐ付け込まれる。この人は俺のことを実の弟だと思って接してくるし、シスコンでブラコンだからスキンシップが多いんだよ。好きか嫌いかで言ったら好きだけど、男にそんなことされて嬉しいかって言われると、それはまた別なんだよねー。
「俺は年齢とか死因とか、その辺りのことはあまり覚えていなくてな。ただ覚えていることもある。まずお前の弟である直人だが、あれは大物になるぞ。間違いなく歴史に名を残す。家を継いでどれくらい経った後のことかは覚えていないが、すでに大きすぎる功績を残していたな」
「それは当たり前でしょ。直人くんなんだから」
「直人だけじゃなくてナギサ、お前もだぞ? あらゆる世界で伝説になっていた」
「なっていた?」
「ああ、すでにな。佐倉凪が桜井渚だということはもう知られてる」
えぇー……まあどうせ死んでるし良いけどさ。佐倉凪は俺の芸能人としての姿だった。色々面倒なことになりそうだったから、本名や本当の姿は隠していたんだけどバレちゃったかぁ……
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