75 最優秀賞
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「───皆さんのおかげで学園祭の出し物、クラス部門で最優秀賞を獲得することができました。お疲れ様でした!」
セインくんの言葉で教室中が歓声で溢れる。クラス部門での最優秀賞は、俺達のクラスの演劇が終わって少ししてから発表された。自薦禁止の投票スタイルで二位と大きく差を付けて最優秀賞に選ばれたらしい。国中が俺達のクラスの話で持ち切りなのが風に乗って流れてくる声で分かる。
明るい噂は嬉しいよね。それだけで俺達精霊は幸せだよ。穢れは嫌いだけど、綺麗なものは好き。それは精霊に限ったことではないだろうけどね。
「お疲れ、ナギサ」
「君もね。魔法を使った演劇、大好評だったみたい」
「お前や精霊様の力があったからできたことだ。感謝しないといけないな。それにお前の演技もすごかったな。演技とは思えないほどに何もかもが完璧だった」
「それは嬉しいな。みんなもすごかったよ」
目が肥えているであろう俺から見ても本当に上手な演技だった。もしここが前の世界だったなら、一度で良いからみんなと仕事をしてみたかった。それくらい素晴らしかったと俺は思うよ。
「お疲れ様です。まさかあそこまでお上手だとは思わなかったので驚きました。……ナギサ様、今日は楽しかったですか? あなたの心に残る思い出となりましたか?」
「うん、一生忘れないだろうね。すごく楽しかったよ。……みんな、今日はありがとう。これは俺からのお礼だよ」
夕方になって天気が少し悪くなってきていたから、少し天気を弄って快晴にし、空に虹を掛けた。そして国中に花を降らす。すると窓から見える景色に再び歓声が上がった。虹は雨上がりに見えるものだし、花が降ることも普通はないから非現実的で素敵でしょ。
自然を自由自在に操れる俺だからできることだし、これでお礼になるんじゃないかな。しばらくの間はこれで楽しんでくれたら嬉しい。
自分でやっておいて何だけど、ちょっと結婚式みたいに見えるねぇ。長時間は使わない方が良いから少しの間だけど、俺の気持ちが伝わったら良いね。
「ナギサ……ちょっと良いか?」
「あ、うん」
隣にいたセインくん達に断りを入れて教室から出る。俺を呼んだのは神妙な顔をしたエリオットくんとアリス。呼び出される理由に心当たりはないんだけど、何の用だろうね。
「今日、俺達二人でお前の宮にお邪魔させてもらえないか? 三人で話したいことがある」
「良いよ。もう帰る?」
「そうしてくれると助かるが……良いのか?」
「うん。セインくん! 俺、ちょっと用事ができたからもう帰るね!」
教室の中から様子を窺っていたセインくんに声をかけると頷いてくれたので、俺達は三人で地の宮に転移した。転移した直後、俺がエリオットくんを見た時……すでに彼は別人のような笑みを浮かべていた。
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