70 彼らの企み
「観ていただけなのに疲れた……」
「私は笑い疲れた」
「じゃあ笑うなって」
もう全力で抗議したい。せめて名前くらいは変えてくれたら良かったのに。変えたところで『精霊王』って言葉がタイトルに入っている時点で俺のことだと分かるだろうけどそれでも!
「でも残念な演技だったのはナギサ役とその敵役くらいじゃない?」
「俺役って言わないでよ。どっちも重要な役なのになんでもっと練習しなかったのか不思議」
「お兄ちゃんが言うにはトラブルがあったらしいよ。直前になって主役とその敵役が怪我をしたのだとか。主役の人達も頑張って練習していたんだって。馬鹿にしていたわけではなくて、ナギサに重ねて見ると面白かっただけです。ナギサ役と敵役の方、ごめんなさい。クレームはナギサにどうぞ」
「やめてよー」
どこに向かって謝ってるの? また俺役って言ってるしさぁ……
「ナギサのクラスは次の次だったよね。もう舞台裏では準備しているんじゃない?」
「たぶんね。見に行く?」
「うん」
「……アリスはさ、俺に何か隠してるよね。何か企んでるでしょ」
「そ、そんなことないよ……?」
いや、顔に出ちゃってるし。鎌をかけただけなんだけど、本当に隠しごとがあるんだね? それと、隠しごとをしていそうなのはアリスだけじゃなくて……
「セインくん、ランスロットくん、エリオットくん、アルフォンスくん、精霊、演劇」
キーワードっぽい言葉を並べてみるとアリスの肩が跳ねた。この四人とクラスメイト、精霊達、それからアリスは最近俺から隠れて何かコソコソやってたみたいなんだよねぇ。
俺が気付かないはずがないのに、仲間外れにするなんてひどいなー。
「え、えっと……ごめんね?」
「可愛く言っても誤魔化されないから。君は俺に隠れて何をしようとしていたのかな?」
「お……怒らない?」
「内容によるかなー」
「そこは怒らないって言ってよ……」
なんで俺達はいたずらがバレた子供とその親みたいな会話をしているの? 俺はいつからアリスの保護者になったんだろうね?
「別に言いたくないなら言わなくて良いよ。どうせ今からセインくん達のところに行くんだし、その時にみんなから聞き出せば良いだけだからね?」
「うぅ……やっぱりナギサに隠しごとができるわけないかぁ……うん、安心して。『嫌がっても必死にお願いすれば最終的にはやってくれそうなこと』をみんなで考えていただけだから!」
開き直ったね。嫌がっても必死にお願いすれば最終的にはやってくれそうなこと、って何なの? それをクラスメイト含む総勢数十名で考えていたってことー? 嫌な予感。嫌な予感しかしないね……?
そもそも、いつの間にアリスは俺のクラスメイトとも仲良くなっていたわけ? 仲良くなってないと協力して変なこと企んだりしないよね? 何人かはアリスの悪口を言ってたくらいなのに、それを黙らせるって……やっぱりアリスって強かだし、かなりの人誑しだよねぇ……
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