67 校舎裏にて
「おー……いっぱい集まってきたね」
「たぶんお父さん達も紛れ込んでるよ。お父さんは変装するって言ってたかな」
「大精霊だとバレたら困るもんね。たのし、み……始まるまであと三十分くらいかぁ」
「それがどうかしたの?」
「んー?」
「もう……誤魔化さなくても分かるから。ナギサなら三十分もあれば十分でしょう? 早く言っておいでよ」
「ありがと」
俺の好きな子は誤魔化されてくれないらしい。精霊の血を引いているから純血の精霊ほどではなくても勘が良いんだろうね。だから俺が感じた気配にも気付いたんだと思う。
「こんにちは」
「うわっ! なんだお前!」
「なんだって言われてもね。いやーな、不快な気配を感じたから様子を見に来たんだよ? ……というのは嘘で、そろそろ尻尾を出してくれないかなって期待して罠を仕掛けておいたら、見事に引っ掛かってくれたようだから始末しに来たんだよ」
貴族と平民、人間もエルフも魔族も混ざっていて全部で十人ほど。全員男か。エルフ族や魔族はあまり街中に出て来ないから精霊と同じように人間と関わる機会なんて中々ないはずなんだけど、やっぱり種族関係なくやられてるみたいだね。
「ちょっと王様! 今回の功労者であるわたしを無視するなんてひどくない……?」
「あー、ごめんねミサ。助かったよ、ありがとう」
「アリス様は?」
「危ないかもしれないから置いてきた。ちゃんと護衛もつけてるから心配無用だよー」
「それなら良いけど……」
完全に放置状態の男達はとっくに拘束済み。校舎裏だから誰に見られることもなく静かに事を進められそうだよ。もちろん騒がれては面倒だから声を出せないようにしている。その辺りは抜かりないのでご心配なく。
「んー……残念。やっぱり洗脳されてるから何の情報も持ってないね。だけど予想通りだからそれほど問題ではない、かな」
「どうする?」
「どうしよっか。取りあえず、風の宮に連れて行って後のことはシルフに任せようかな。洗脳は浄化魔法で何とかなる……? ならなければ始末させて、洗脳を解くことができたなら駒にでも使わせてもらおう。今日は水の宮に置いて、明日になったら風の宮に移動させてくれる?」
「うん、分かった。でもどうして明日なの?」
「特に理由はないよ」
「そう? ではうん、御意に」
シルフはエルサちゃん達家族と一緒にいたいだろうし、久しぶりに会えたのにいきなり仕事だから戻れって言うのはさすがに可哀想だからね。
家族を大切に思う気持ちも、一緒にいたいって気持ちも良く分かるからこれくらいの配慮はしないと。あれこれ仕事をさせている立場の俺が言えたことではないんだけどねー。
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