66 演技力
「アルフォンスくん、これあげる」
「これは……?」
「俺の魔力を込めたピアス。一度だけ、君に危険があった時に守ってくれる。でも一度使ったら消えちゃうから注意してね」
「あ、ありがとうございます」
一瞬もらうべきか迷ったようだけどちゃんと受け取ってくれた。アルフォンスくんのために作ったんだから、もらってくれなくても押し付けるけどねー?
だって王太子って危ないでしょ。いつも命の危険があるんだから持っていて損はない。
「じゃあね。ご両親によろしく」
「はい」
アルフォンスくんと別れ、時間を確認するとエリオットくんのクラスの演劇が始まる頃だったので、アリスと相談して一緒に観に行くことにした。
少し早めに来たからか席は結構空いていたので、しっかり最前列を確保しておいた。
「このクラスは何の演劇だったか忘れたけど、たしか俺とアリスがモデルになってるってエリオットくんが言ってたよ」
「精霊王と囚われの姫、だったと思うけど……私、誰かに囚われるんだね?」
「あはは」
「なに笑ってるの。現実にはならないでほしいタイトルだよ」
それは俺も同感。アリスが誰かに囚われるとか絶対許せないからねぇ。まあよっぽどの手練れでもない限り、捕まえようとした時点で返り討ちに合うだろうけど。俺に守られてるイメージが強いかもしれないけど、アリスは大精霊の実子なだけあって十分すぎるほどに強いからね。
……で、演劇の話だけど、この物語の中での俺はいわゆる正義のヒーローとか、そういうのにあたるってことなのかな? 我ながら似合わな過ぎて笑えるよ。いや、逆に笑えないかも……?
「アリスはエリオットくんが何の役か知ってるの?」
「ううん、私は何も聞いてないよ。だけどお兄ちゃんが主役をやるとは思えないから裏方なんじゃない? 主役以外を演じる可能性もあるけど、お兄ちゃんが演技が得意だなんて聞いたことないし」
「何となく素質はありそうだなって思うけどねー。天才的だったりして」
「ナギサじゃないんだからそれはないでしょう。私、ナギサ以上に演技が上手い人は見たことないなぁ」
その俺も、腕は落ちていると思うよ。俺の芸能活動で舞台役者や俳優業はメインだったから毎日のように演技していたけど、転生してからは『ナイジェル・シーラン』としてほんの少し、本当に短い時間だけ演じたくらいだからさ。百の顔を持つ役者とも言われたことがあるけれど、時間が経てば実力も落ちる。何をするにしても、生まれ持った才能でもない限り、継続して努力しないとどうしても衰えてしまうからね。
今の俺がいきなり『はい、この役を演じてください』なんて言われてもたぶん無理。やってみない分には分からないけど、普通は無理だと思うよ。
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