62 学園祭当日
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晴れ渡る秋空の下、色とりどりの線を描いて空高く花火が打ち上がった。あれから一ヶ月と少しが経過し、今日はついに学園祭当日。学園祭は今日の朝から晩まで開催されるらしく、学園の許可証があれば生徒以外でも参加することができる。俺の知り合いではシュリー家とシーラン家、それからティルアード王家が来るという話を聞いている。生徒の家族であっても許可証が必要なくらい警備面には気を遣われているから、貴族でも安心して楽しめると思う。
でもティルアード王家が許可証を求めた時は学園も驚いただろうねぇ……何でも、アルフォンスくんが俺に会いたいと言っていたらしい。アルフォンスくんが王城に帰って以来まだ数回しか会っていないから、顔を合わせるのが楽しみだね。成長期だろうし、前に会った時と大分印象が変わっているかもしれない。
出し物は様々で、食べ物のお店をやるクラスもあると精霊達の噂で聞いた。楽しいことが好きな精霊は俺が学園祭に参加している以上絶対遊びにくるだろうねー。騒ぎにならないよう祈っておくよ。
「ねぇ、エリオットくん。君のクラスの演劇は何時から?」
「午後の部、最後から三番目だったはずだ」
「僕達のクラスは一番最後なんですよ。良かったら観に来てくださいね」
「もちろんだ。というか、二年一組の出し物は全校生徒が観に行くと思っておいた方が良いぞ。ステージでの練習時間がお前らの前後だったクラスは練習風景を少し見ている。知っていると思うが、ものすごい演劇になると国中がその話題で持ち切りだぞ。この学園は王立なだけあって何をするにしても規模が大きいんだ。それだけ注目を集める」
「だって! 頑張ってね、ランスロットくん。俺、王子役を引き受けなくて良かったと心の底から思ったよ」
仕事じゃないのに自分の演技を大勢に見られるなんて嫌だしね。俺は演技自体が大好きだけど、人に見られるとなると話は別だからさ。ランスロットくんはご愁傷様ってことで、俺は気楽に遊ぼー。ランスロットくんの引き攣った笑顔は見えないね。俺、都合が悪いものは見えないふりをするから。
「行こ、アリス」
「うん。お兄ちゃん達、また後でね!」
相変わらずの天使な笑顔に、エリオットくんは嬉しそうな笑顔を返していた。エリオットくんも中々のシスコンだよねぇ。
「どこ行くー?」
「うーん……まずはうちのクラスの出し物を見に行っても良い? 私のクラスはお化け屋敷をやってるの。とは言っても、私は準備係だったから学園祭中は自由に遊べるんだけどね」
「お化け屋敷かぁ……」
「そんなに暗くないよ。教室内だから少し狭いけど、ナギサが怖がるほどではないと思う」
「じゃあ行こうか」
俺の心配していることも、アリスには手に取るように分かるのだと自慢気に教えてくれた。こんな自慢は可愛いだけなんだけど、アリスはそこのところ分かっているのかな? たぶん分かってないよね。




