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【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?  作者: 山咲莉亜
第2章 亜麻色の光

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54 弱みの一つは

「じゃあ部屋に戻ろ……え!?」

「……っ!」


 あまり一人で歩き回らないよう軽く注意し、部屋に戻ろうとアリスの手を引いて一歩踏み出したその時、俺とアリスは宙に浮くことになった。飛行魔法ではない。そんなことになったのは突然床が抜けたから。咄嗟にアリスを引き寄せたものの、そこまで高さはなかったようで、魔法を使う間もなく地面に叩きつけられそうになった。叩きつけられる前に受け身を取ることができたから大怪我は免れたけど……


「ナ、ナギサ大丈夫!?」

「ん……受け身を取ったから大丈夫だよ。かすり傷くらい。それよりここはど、こ……」

「庇ってくれてありがとう。私も分からないけど床が抜けたよね。この空間、隠し部屋か隠し通路かな? ……あ、うん。ナギサが急に黙り込んだ理由が分かったよ」


 俺達二人が立っているのは『床が崩れた先の落ちたところ』にしてはちゃんとした空間だった。ここも含めて全ての宮は初代精霊王のアリサ様が世界と相談して設計した物。俺でも把握しきれていないのは自分で建設した物ではないからだよ。

 なので状況を確認しようと顔を上げた時、少し遅れてようやく気が付いた。ここは隠し部屋だと。見た感じどの部屋にも繋がってなくて、抜けた床は元通りになっているから俺とアリスは完全に閉じ込められている。床下の隠し部屋に電気なんてものは恐らくない。俺は光属性の魔力なんて持ってなくて、そもそも光属性は存在しない。


 つまり……ここは、暗くて狭い場所。嫌でもフラッシュバックする。一瞬で血の気が引き、吐き気が止まらなくなった。手が震えているのも分かる。


「…………」

「大丈夫だよ、ナギサ。私が一緒にいるから。転移魔法は使える?」


 優しく声を掛けてくれるアリスに頷き、一旦廊下に転移する。長距離を移動するには当然それだけの魔力がいる。多くの魔力を使う時は冷静でいないと魔力が暴走する可能性がある。だからできる限り近く、それでいて明るい廊下に転移した。


「ナギサ、もう大丈夫だよ。だから手を貸して? そんなに握りしめたら……ほら、血が出ているじゃないの」

「……ごめ、ん」

「謝らないでよ。悪いのはナギサじゃなくて……」


 怒りのせいか、少し俯いて声を震わせているアリス。高所恐怖症、対人恐怖症、閉所恐怖症、暗所恐怖症。良くあるのはこの辺りだと思うんだけど、そういったものに恐怖を覚えるのは大抵理由がある。何の理由もなく怖いなんてこと、普通はないでしょ。俺の弱点ってやっぱり、どれも前世に関わることばかりだね。


 どの世界にもライバルの弱みを握ろうとしたり、恨みを持つ相手を殺そうとする人はいる。それは俺も同じ。実際、精霊殺しの呪いの時は犯人を殺す気でいたし。


 俺の生家は限りなく優れていたけれど万能ではなかった。いくら俺でも、六歳とかそこらでは無力のようなものだよ。護身術を習っていても力や体格差ではどうしても敵わない相手がいる。幼い俺を誘拐して桜井の情報でも聞きだそうとしたんだろうね。幼くても次期当主だから情報を持っていると思ったんだと思う。そしてそれは間違ってなかった。

 子供だから、いや子供じゃなくても同じだと思うけど、監禁しておけば精神的に弱ると考えたのかな。一週間くらい捕まってて、散々痛めつけられて、結局俺は口を割らなかったけど救出される頃にはずっと監禁されていた『暗くて狭い場所』に恐怖するようになっていた。


 訓練なんかで慣れている痛みと違って、監禁という状況は本当に辛かった。監禁された経験なんて普通はないからね。俺が閉所暗所恐怖症になったのはそれが原因。毒の時ほど精神崩壊はしなかったよー? ただ、俺の大切な何かを壊しただけ。まだ世界を知らない子供だったからこそ、トラウマとして異常なまでの恐怖心を俺に植え付けたんだろうね。


 アリスが怒っているのはその犯人達に対してかなー。見た感じ、この状況を作ってしまった自分に対しての怒りもあるみたいだけど……気にしなくて良いのにな。俺が弱いのが悪いんだから。例の犯人達に関してはとっくに死んでいるだろうし、そちらに対しても怒りは向けるだけ無駄なんだよね。跡取りをそんな風にされてうちの一族が黙っているはずがないのだから。

 それだけ俺は一族にとって大切な存在だったんだよ。幼い子供を監禁し、心身共に散々痛めつける価値があるくらいにはさ。

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