52 珍しく
「なんで急に見たくなったの?」
「気になっただけだよ。この傷があると忘れたくても忘れられないんじゃない……?」
「そんなに辛いわけでも、辛かったわけでもないから大丈夫。魔法の練習中のはずなんだけど、度々話が変わるね?」
「もう夜だから続きは明日で良いんじゃない?」
「そうしようか。君は魔法を覚えるのが早いみたいだし、急ぐ必要もないからね」
別に辛くないよ。辛くても辛くない。辛いから、痛いから、ショックだったからって過去が変わるわけではないのだから、気にしても時間の無駄だよ。
「ただ、次に同じようなことがあったら……」
今度こそ俺は、本当に壊れるんだろうねぇ。今は本当に大丈夫なんだけどー。
「夕食と湯浴み、どっちにする?」
「お風呂にしようかな。ここにお風呂なんてあるの?」
「当たり前でしょ」
精霊は他種族に必要なことも基本的に魔法で補えるけど、他種族と同じような過ごし方をする精霊だって少なくないからね。
「一緒に入っちゃいますか、ナギサさん?」
「冗談言わなくて良いから早く入ってきなよ」
「私は本気なのに残念だなぁ」
「はいはい、残念だね。俺の部屋の使って良いよ」
良くその顔で本気とか言ったね? 完全に面白がっる時の顔じゃん。こんな感じだからアリスと一緒にいると飽きないんだよね。お茶目? と言うより無邪気なのかな。なんかずっと楽しそうにしてるんだよねー。
時々変なことやとんでもないことを仕出かすから見ていて面白いし、何をしていても可愛い。魔法の訓練なんて彼女とゆっくり話すための口実なんだけど、アリスはそんなこと気付いてないだろうね。もちろん練習しておかなければならないのも本当だけど。
◇
「申し訳ありません」
「申し訳ありませんでした……」
「…………」
「次はナギサ様にバレないよう、静かに戦います」
「いや、俺が気付かないわけないでしょ。喧嘩するのは良いんだけどやり過ぎないで? 周囲への影響を考えてやりなよ」
アリスが湯浴みに行っている間、俺は読書でもしていようと思って書庫に向かったんだよね。だけど本を手に取ろうとした瞬間、地の宮の庭園の方からとんでもない轟音が聞こえてきた。何事かと思って急いで転移すると、そこに立っていたのはシルフとノーム。綺麗な庭園が悲惨なことになっていて、それでも二人は庭園荒らしを続行しようとしていたのでとりあえず一撃ずつ入れ、半ば強引に宮の中へ連れ込んだ。
何があったのかと話を聞けば、珍しく些細なことで喧嘩したらしい。それで気付いたらあんなことになっていたのだと説明された。大精霊同士の喧嘩って恐ろしいね。
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