50 拗ねるアリス
「でもナギサ、それなら扇を失くすか奪われたらその時点で魔法が使えなくなるんじゃない?」
「言ったでしょ。魔力の貯蔵庫でもある、って。魔力量がそんなに多くないなら貯めておく必要はないし、逆にそれで魔力が枯渇したら大変なことになる。だから自分の中に置ききれない分だけ扇の方に移すんだよ」
「あ、そっか。たしかに扇なしでも魔法使ってるもんね」
「うん」
そもそも精霊王以外は扇なんてものは使用しないんだから、扇なしで魔法が使えないなら何もできなくなるよ。精霊は攻撃も守備も生活だって、ほぼ全てのことに魔法を使うからね。唯一にして最大の武器だから、それこそ魔法を使えなくする道具でも作られたら精霊はおしまいなんだよねぇ……
「話が逸れちゃったけど練習を始めようか。練習といっても気楽にやったら良いよ。想像力が大事っていうのはシルフに聞いているだろうし、あまり気を張って想像力が乏しくなると困るから」
「そうだね。ところでナギサ、もう一つ聞きたいことがあるんだけど、もし何らかの力……薬とか? で、何も考えられなくなったらどうするの?」
「すっごい悪い想像ばっかりするねぇ……ふふ」
「もう、なんで笑うの! 一応聞いただけです。知っていて損はないでしょう」
「……っふ、そうだね。もう笑わないから拗ねないでよ」
拗ねてるアリスには悪いけど、笑ってしまうのは仕方なくない? さっきから扇を失くしたり奪われたりしたらどうするのか、なんてことも聞いてきてるし、純粋に疑問に思っただけなんだろうけどさぁ……答える側からするとちょっと笑ってしまう。話が脱線しすぎだし。
でも頬を膨らませて拗ねてるアリスも可愛いね。こうして完全に二人きりになったのは久しぶりだったからか、少しだけ気まずいというか……最初は緊張感があったんだけど、それも変に心配性なアリスのおかげで全部吹っ飛んでしまった。
「そう言いながらも笑っているじゃないの。説得力ないからね?」
「ごめんごめん。さあ、今度こそ練習するよ。両手貸して」
差し出された手を取って手のひらを上に向け、痛くならない程度に軽く握る。何をするのかと視線で問われたけど、それはこれから分かるので何も言わずに微笑んでおいた。
「まずは水属性の拘束魔法ね。精霊王である俺が祝福したから、今アリスの中には五種類の魔力がある。それは地水火風と無の属性。風は分かるよね。それぞれの魔力の特徴を覚えておいて。これが水」
アリスの中にある俺の魔力の内、水の魔力のみをアリスの全身に巡らせる。祝福を与えた相手ならこうして干渉することができる。契約でもできなくはないけど、祝福の方が楽らしいよ。俺は誰とも契約したことがないから良く分からないけどね。ちなみに契約や祝福を取り下げることができるのも、パートナーとして直接干渉できるからなんだよ。
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