47 二人きり
「…………」
「…………」
「えっと……ナギサと完全に二人きりになるのって久しぶりだね。前に会いに来てくれた時はうちのお店だったから、一階にお客さんがいたし」
「そうだね」
いつぶりかなー。前世でも死ぬ直前は予定が合わなくてしばらく会えてなかった。もう一年以上経ってるかなぁ……長かったような、意外と短かったような不思議な感じがする。
俺達が転移した先は地の宮。地の宮って実は王城の裏にあるんだよ。水の宮と同じくらいの広さで、王城三つ分くらいかな。
「それで、ここはどこ?」
「地の宮。俺も部屋数や通路は把握しきれていないから、あまり歩き回らないようにね。アリス、君は極度の方向音痴なんだからさ」
「分かりました」
「おいで、俺の部屋に行くよ」
水の宮とは逆で、この宮は完全に洋風の造りになってる。雰囲気は普通のお城って感じかな。隠し通路もあるみたいだけど、これって造る意味あったのかな? 精霊王は転移魔法を使えるんだし、緊急時でも隠し通路は不要な気がする。他の精霊達のためにあるのかもしれない。まあ俺にとっては今のところ不要だね。俺は自分と精霊全員を同時に転移させられるだけの魔力量や実力があるから。
「綺麗な……宮? お城? だね」
「俺がここにいない間はノームが管理してるんだよ。地の宮だからお城のような雰囲気ではあるけど植物が多いよね」
「うん。ずっと良い香りがする」
「俺の鼻が良いことを知ってるから匂いが強くない種類のものにしてるんだって。すごく助かってる」
その代わり、この宮でもかなり広い方の部屋は植物園と化しているんだけどね。匂いが強い植物はそっちにあるらしい。温室にするから使いたいと言われて許可を出したのにさ、温室じゃなくて植物園になってるんだよ。
あの部屋は床ではなく地面になっている。全面ガラス張りにして日光を取り入れてあるし、ノームって植物のことになるとうるさいんだよねぇ。
見ていて楽しいし、普通に綺麗だから全然構わないんだけどさ。でも自分の宮の一室が植物園って……なんか気になるよね。定期的に確認しに行ってるよ。
「失礼します」
「どうぞ。お茶入れるけど何が良い? 植物園がある宮だから大体なんでもあるよー」
何百種類も植物があるからね。俺もアリスも紅茶好きだから、その点では植物園の存在は嬉しいかも。
「植物園……?」
「あー……うん、あまり深く考えなくて良いよ」
「そう? それじゃあ……アールグレイでお願いします」
「はーい」
俺も同じのにしよ。料理は壊滅的に下手な俺だけど、お茶なら入れられる。プロのようにはいかないけれど、自分で飲むために練習したからちゃんと美味しいと思う。味音痴ではないから大丈夫……な、はず!
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