45 他属性がいたなら
「ところでルー、なに作ってるの?」
「精霊です」
「精霊って……下位精霊?」
ルーは大人の姿になれるけど本来は中位精霊。下位精霊なら生み出せるけど魔力の消費がヤバいんじゃない?
「本物ではありませんよ? 氷で精霊を作っているだけです。ナギサ様も魔法は使い方次第だって言っていたじゃないですか。動けなくても形だけ作ってみたらどうなるかな、と」
「へぇ……面白い発想だね。氷の精霊かぁ」
魔力を注いだら普通の精霊みたいに動きだしたりしないかな? まあそれは先の精霊王が検証したと思うし、四属性しかいないってことはそういうことなんだろうけど。
もし氷の精霊がいたら使えるのは氷魔法? 氷系統の魔法は水属性だから水の精霊が使えるよね。じゃあ俺みたいに無系統とか? でもそれは氷と関係ない。こういうのって考えたことなかった。意外と楽しい。
「ルー。地水火風以外の精霊が存在するとしたらどんな属性だと思う? 俺は緑属性とか光や闇あたりかな」
「緑属性なら植物に関する魔法ですかね。地属性の精霊が使えますけど、存在していたら地属性と緑属性は相性が良さそうです。水属性とも」
「うん。でも光と闇は存在していたら大変かも。相反する属性だから敵対しそう」
「ナギサ様、こういった話に興味があったのですね?」
「興味があったというか……さっきルーに言われるまで考えたこともなかったから、四属性以外にもいたら面白いんじゃないかなと思ってね」
魔法の指導をしている精霊達の方を見ると、教わっている生徒だけでなく精霊達も楽しそうにしていた。サラマンダーやノームは大精霊の中でも特に他種族との関わりが少なかったから最初は緊張していたけど、今はすごく馴染んでるみたい。彼らにお願いして正解だったかも。
精霊達に良い影響を与えているのならこれからも交流する機会を作りたい。人間に限らなくても良いしね。とりあえず楽しめているのなら良かった。
「ナギサ様!」
「はいはーい。ちょっと行ってくるね」
「はい」
セインくんに呼ばれたので一言断りを入れ、何やら嬉しそうにしている彼の方に向かう。
「どうしたの?」
「観てください。ここのシーン、完璧じゃないですか?」
セインくんの合図で舞台に立っていた五人が物語の一幕を演じてみせる。ここは短いシーンだけど場面の移りが多くて難しい。だけど全員初心者とは思えない程に見事な演技だった。演技をする上で一番難しいことって、感情を大きく表現しなければならないところだと思う。
自分では十分だと思っていても、客観的に見ると何を表現したいのか分からないってことも少なくない。
「うん、完璧だと思う。すごく良い。他のシーンも同じ感じでやってみてよ」
「そうですよね!」
「ご満足いただけたようで何よりだ」
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