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【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?  作者: 山咲莉亜
第2章 亜麻色の光

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44 取扱説明書

 ◇


「ランスロットくん、そこは強く」

「分かった」

「そっちの子は演技は上手だから、もっとお腹から声を出した方が良いよ」

「……本当は僕の仕事なんですけどね」

「気になっちゃって。でも皆すごいね。少し言うだけですぐに改善されてる」


 十月に入り、本格的に学園祭の準備が始まった。俺達二年一組はこうして演劇の練習をする傍らで、しっかり魔法の練習もしている。最初に演技のことで口を出した時、俺の言う通りにしたら見違えるように良くなるって盛り上がっちゃって、その結果俺がこうして演技の指導をすることになってしまった。

 もちろんセインくんと相談しつつ、流れや全体的なことに関してはセインくんが、個人的なものは俺が指示を出すようになってる。いつの間にか俺の役割増えてるのなんでだろうねぇ……


 役者が演技練習をしている間、このシーンで出番がない人は精霊達と魔法の練習をしている。俺が力を貸すって話になった後、万が一倒れたりしたら大変だと思って一応準備しておいたんだよね。限界まで魔法を使っては回復するまで待つ、ということを何度か繰り返した。俺の体は順応が早いから、これで少しだけ魔力の回復速度が上がった。


「皆さんが頑張っているのもありますが、精霊王様直々に指導してくださっているので意欲が上がっているというのもあるでしょうね」

「そうかもね。セインくん、火と水は同時に出せるようになった?」

「難しいですね。できなくはないのですが、本当に一瞬が限界です」


 セインくんは監督で魔法を使う機会はないけど、それでも良いから教えてほしいって言うからこうしてみんなの演技を見る合間に練習してる。


 今は俺のクラスがステージを使える時間なんだけど、ステージに立っているのは『光の王子』役であるランスロットくんと、そのパートナーにあたる……いわゆるシンデレラ役の女の子。それから意地悪な継母と姉役の五人だけ。

 この五人はメインの役者で重要人物だから魔法より演技を優先。演技ができるようになったらそこに魔法も合わせて、流れを確認して……といった感じになる予定。


 ある程度演技ができるようになってからの方が進めやすいだろうと話し合った結果だねー。


「ヒロイン役の子。そのシーンは気付かれるかどうかくらいに声を震わせた方が良いと思う。この気付かれるかどうか、ってところが大事だよ」

「気付かれないのなら不要ではないのですか?」

「ほんの少しの工夫が重なることでガラッと印象が変わるんだよ。君の言う通り、今言ったところだけ変えても大した意味はないから、君のやりやすいようにすれば良いよ」

「なるほど……分かりましたわ。ありがとうございます!」


 演技とはいえ、貴族令嬢が他のご令嬢にいじめられる役なんて嫌がる人が多そうだなと思っていたんだけど、意外なことに王子役と同じくらい人気があった。この世界特有の妙な価値観。貴族制度以外は前世にそっくりで緩いところが多い、ってやつが見事に発揮されてる。


「ルー、そっちはどんな感じ?」

「順調ですよ。皆様が筋が良いのもあると思いますけど、ナギサ様が使える魔法は全属性でしょう? 僕達は一つの属性しか使えないのでどうしても教え方が偏ったりします。ですが全属性のナギサ様の魔力は、魔力そのものに魔法の使い方が染みついているというか……ナギサ様の魔力そのものが取扱説明書……みたいな? そんな感じになっているのですごく教えやすいんですよね」

「取扱説明書って……」


 どんな例え? すごい独特じゃない? 良く分からないけど、順調そうならそれで良いか……

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