43 俺達の関係は
「困りましたね。どうやって魔法を使えるようにしましょうか」
「ナギサ様……」
「王様……」
「大量の手作りスイーツでどうですか!」
「引き受ける」
……って、なにこれ。手作りスイーツに惹かれちゃって思わず即答してしまった。今の一瞬で俺が力を貸すことに決まったけど、これほんとに大丈夫? 俺、倒れないかな?
今更断りはしないけど、皆がハイペースで魔法の練習をしたらすぐに枯渇してしまいそう。でもさすが夫婦だね。ルー達息ぴったりだったんだけど。
「ちなみに大量ってどれくらい?」
「いつもの二倍……不満そうですね」
「五倍」
「無理ですよ。三倍」
「せめて四倍にしてー」
「三倍です。これ以上は糖分過剰摂取で病気になりますよ。ただでさえ砂糖の量が多いのに」
ならないし、なっても大丈夫でしょ。何と言ったって俺は魔法が使えるんだから! 治癒魔法を使えばそれで解決じゃない? 太ってしまう可能性は大いにあるけれど。
「……ね、頑張ろうとしてるナギサに提案。スイーツの量を三倍してもらうのと、いつも通りの量にする代わりに学園祭が終わったら私とデート。どっちが良い?」
「デート」
「即答なのね。私、ナギサならもっと悩むと思ったんだけど?」
普通に考えて、ここでスイーツを取る理由はないでしょ。俺にとってアリスと一緒にいる時間は何よりのご褒美だよ?
俺が言うのも何だけど、アリスって俺の扱い方を良く理解してるよね。それに『悩むと思った』ってやつ、絶対に嘘だよねぇ。だって提案と言いつつ、答えは分かっているかのような口ぶりだったから。
「良いの?」
「うん、この世界に来てまだ一回もデートしてないし。それから、この話とはあまり関係ないけれどずっと気になっていたことがあるの。今の私の立場って微妙だよね。恋人なのか婚約者なのか、どちらでもないのか……」
「俺は夫婦でも良いよ? 俺達は高校卒業したらすぐ結婚だったのに、転生したせいで年齢が変わったから待ち時間が長引いたじゃん。少なくともアリスが卒業するまでは無理でしょ? アリスが卒業って、この世界だとまだ五年くらいあるよ」
俺もアリスと同じで、今のこの関係は何なのかずっと考えていた。アリスに『婚約者』という選択肢があったようで安心したけど、正直五年も待つとか無理な気がする。元々二年くらいだったのが五年って、倍以上だよ? 普通にきついって。
「じゃあ婚約者で良いんじゃない? 結婚は卒業まで待ってよ」
「二人揃って軽すぎじゃないか? 似た者同士お似合いだな。結婚って、一生ものの約束だろ」
「だって元々婚約者だったから。幼馴染だし似ているところもあるかもしれないけど、私はナギサ程マイペースな性格じゃないよ、お兄ちゃん」
「そういうところが似てるって言ってるんだよ」
それ、ナギサも絶対同じこと言うぞ、と付け加えるエリオットくんは『余計なこと言わない!』とアリスに軽く窘められていたので、見ていて少し面白かった。ちなみにエリオットくんの言う通り、俺でもアリスと同じことを言う。
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