転生
あなたは前世の記憶がありますか?
○月×日……
この日、山井出真太という16歳の少年が病で死んだ。
そして少年の魂は黄泉の世界へ……
冥界で閻魔によって彼の罪が裁かれた。
閻魔
「山井出、お前は16歳という若さでこの黄泉の世界へ来た。お前の事を閻魔帳で調べたが、おまえ自身の中で重い罪といえば10歳の時にお菓子を盗んだことくらいか」
真太
「あ、あの時は考えが幼稚で……」
閻魔は真太の顔を鋭い目で睨みつけた。
真太は閻魔の威嚇に目を逸らした。
そして震えながら彼はこう言った。
真太
「僕には夢がありました。パイロットになって鳥のように大空を羽ばたくという夢が……」
閻魔
「お前の犯した罪はそれほど重くはない。新たに生まれ変わり、来世で幸せになるがよい」
真太
「そ、それでは……」
閻魔
「ただし、転生後は今までの記憶が消えてしまうがな。だがお前の願いどおりの生き物に転生してやる。そして大空を羽ばたくがよい」
そして彼は新しく生まれ変わった。
時は流れ……
彼は大空を自由に羽ばたけるようになった。
だが、それと同時に前世の記憶が蘇ってしまった。
これは異例な出来事だ。
真太
「お、思い出した。僕はかつて人間という生き物だったんだ!そして自由に羽ばたける生き物に生まれ変われたんだ」
彼は喜んだ。
この後に待つ恐怖も知らずに……
真太
「あっ!あれは僕が住んでいた家だ!懐かしいな~」
彼は窓の隙間から侵入した。
真太
「まさか自分の家まで自由に飛びまわれるなんて。ありがとうございます閻魔様。僕は今鳥のように自由に羽ばたいています」
彼は未だ自分が何に生まれ変わったのか知らない。
真太
「鳥なのかな~もしかして、蝙蝠だったりして、あそこにある三面鏡で見てみよう」
彼は自分の姿を見て驚いた。
彼の姿は、鳥でも蝙蝠でもプテラノドンでもなかった。
彼が新たに生まれ変わった生き物……
それは……
ゴキブリだった!
彼はゴキ野郎になったことで、今まで自由に空を羽ばたけたのだ!
そして彼は、かつての母親に見付り、スリッパで叩かれ、また黄泉の世界へと戻っていった。
ゴキに生まれ変わってから、今までで、一番羽ばたいた瞬間でもあった。
めでたし、めでたし