幽霊
どうも皆さんこんにちは。
僕の名は水木悟(21)といいます。
高校を卒業してから、パン工場に就職したんですが、クローン病という難病を抱えてしまったため、今はレンタル屋でアルバイトしています。
病人とはいえ、親に甘えるのも嫌だったので、二日前から一人暮らしをするために、あるアパートに引っ越してきました。
駅も近くて、周りにはコンビニなどもあり、部屋も綺麗なのに、家賃がなんと1万円なんです!
何でこんなに安いのか!と不思議に思いました。
しかも住居人は僕だけです。
でもその謎が分かるのに、三日もかかりませんでした。
引越ししてから2日目の夜。
住人は僕だけだから、TVを大きな音で観ていました。
そのとき、
ピンポーン
と、インターホーンが鳴ったので、僕はすぐに出ました。
「隣のモンやけど、TVうるさいで~」
と、小太りで30代くらいの男性が苦情を言ってきたのです。
「??隣?おかしい……住人は僕だけのはずなのに……」
よく見ると男性には足がありません。
「ま、まさか……ゆ、幽霊!?」
「まあ、世間ではそう言われる。俺はね、3年前に隣の部屋で自殺した神谷令。まあ、よろしく!まあ最近家賃払っていないから、大家のジジイには出て行け言われてるけどな。はは」
はは、じゃね~よ!家賃払ってないからじゃなく、気味悪いから出て行けと大家さんは言っているんだよ!と心の中でツッコンだ!
それにしてもまさか幽霊が隣に住んでいるなんて……
大家さんにだまされました。
「まあ、久々の新入りだ。ちょっと上がらしてもらうよ。何しろ大家のジジイ以外、人と話すのは3年ぶりやから」
僕は恐怖で断ろうにも断れませんでした。
そして恐る恐る、お茶とスナック菓子をとりあえず出しました。
「まあ、怖がるなよ。俺も3年前までは人間だったんやから」
「は、はあ……」
確かに怖がる必要がないような気がしてきました。
口調は怖そうですが、でも優しそうな幽霊だし……
「あ、あのう……あなたは成仏できないんですか?世間で言う悪霊ですか?」
「悪霊って!失礼な!あのな、一応あの世に行ったら、今死者が増えちゃって、で、新たに生まれ変わる……え~と、転生って奴か?その作業が遅れてるんだとよ。それで、あの世での居場所が見つかるまで、幽霊となってしばらくこの世で生活することになったんや~。せやけど、3年経つが未だに死神から連絡がこんのや」
そういいながら、幽霊はスナック菓子を食べ始めた。
「あのう、それではTVで言っている悪霊とかは、皆さん、あの世待ちなだけなんですか?」
「まあ、中には悪霊も居るらしい。万引きしたり、ひどい奴は人を呪い殺したり……」
幽霊になっても万引きする奴がいるのかよ。
「俺な、失恋が原因で首吊りしてもうてな!今は後悔しとる」
そういいながら、遠慮なく菓子を食べる幽霊……
それにしても幽霊ってこんな感じだったとは……
その後も彼と話が続いた。
「あんた、レンタル屋でバイトしとるのか。映画好きか?俺も好きでね。幽霊だからタダで見放題!でもホラーは苦手だな。この前、ゾンビモノ見たけど、死んだ人間が蘇って、人を襲う……ああいうのは苦手」
幽霊なのにゾンビが怖いのかよ。
「それより、死神のやろう、早くあの世での俺の居場所を見つけろってんだ!家賃払ってね~から、大家に毎日出て行け~!といわれる身にもなってみろ」
だから家賃じゃなく、気味悪いから出て行けって事だよ!と心の中でツッコンだ!あくまでも心の中で……
そのときだった。
「この野郎!まだ出てっていないのか!」
「げっ!大家のジジイ!」
大屋さんは何故かサングラスをして、でかいマスクを付けて、帽子をかぶりながら僕の部屋へやってきた。
「大家さん!幽霊がいるなんてどういうことですか!」
「スマンな。今追い出すから……ほら、お前が出て行かないから、怖がっているじゃないか!」
といいながら、サングラスやマスクを取り始めた。
すると……
尖った耳、狼のような鋭い目、恐ろしい口と牙……
この人一体何者?
「いや~、今日は満月じゃから、狼に変身してしまうんじゃ」
「(おい~!アンタ!狼男なのかよ!幽霊より怖いじゃないか~)」
と、恐怖のあまり、心の中でツッコンだ。
「水木さん、スイマセンね。さすがに幽霊が出るなんて言えなくて」
「(幽霊よりもアンタのほうが怖いよ~)」
と心の中でツッコンだ。
僕はその後、幽霊と狼男に挟まれて夜を過した。
そしてすぐにアパートを出て行くことにした。
出て行くときに大屋さんは、「幽霊が出るアパートはやはり嫌ですよね」などと言っていたが、アンタの方が怖いから!と心の中で思った。
しばらくして、僕は違うアパートに住み始めた。
それから1週間後……
隣に新しく誰かが引越ししてきたようだ。
ピンポーン!
とインターホーンが鳴った。
きっと新しく越してきた方が挨拶に来たのだろう。
僕はドアを開けそして驚いた。
「どうも隣に引越ししてきたデビル三世です。職業は悪魔をやっています。よろしくお願いします」
おい~!幽霊や妖怪の次は悪魔かい~!
と心の中でツッコンだ!
めでたし、めでたし