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第48話 出会えたけど、なんかやばい?

 慣れない山道に苦戦しながら、ヴァルナフォンのおかげで道に迷うこともない桜たちは真っ直ぐと表示されている方向へと直進していった。途中魔物も現れはしたが、いずれもラングレーの剣によって一刀両断。

 肉として店頭で販売される前の状態の魔物を見たことがなかった桜も、最初は魔物が出るたびに悲鳴をあげていたが、次第にラングレーが何も言わずとも血だらけの魔物を水で洗い流し収納ストレージに格納した。


「サクラ様が王都から出て生活する良い訓練にもなりましたね。今はまだ王都で買ってきた食料が残っていますが、育ち盛りの獣人たちばかりを抱えておりますから。自給自足の生活に慣れなければ。」

「分かってるし。ちょっとビビっただけじゃん。もうなんとも思わなくなってきたから任せてよね。」

「へぇ。この短時間で…。精神系の魔法ですか?」


 言われてみれば最初は森の中で音がするだけでも何が出るのかと心臓が口から飛び出しそうなほどだったにもかかわらず、今では頭がとれた魔物を見ても、皮をどう剥ぐか、この毛皮は暖かそうだなんて、そんなことばかり考えていた。


「確かに。落ち着け〜落ち着け〜って思ってたからかな?魔法は創造力、的な?」


 桜が歯を出して笑うと、ラングレーはまたため息をつき、

「精神系の魔法は繊細な魔力操作が必要だと言われているんですけど、もう何も言いません。」

と呆れ顔で足を進めた。


「いいなぁ。ボクも魔法が使えたら良かったのに。」

「ラビは魔法が使えなくても、足が速いし、高いところまでジャンプできるじゃん!耳もいいし!これからはみんなで魔物捕まえないといけなくなるからさ、ラビの力は助かるよ!」

「えへへ。そうかな!ボク頑張るよ!!」

「ぐぅ、ラビ、マジ可愛いんですけど。激ヤバ。その笑顔で死ねる。」

「えっ、お、お姉ちゃん死なないで!」

「ラビ、サクラ様の発言は間に受けないで大丈夫ですよ。ほら、日が暮れるまでに村に戻るんですから、早く行きますよ。」

「ランラン、ノリ悪〜。ま、もうちょいだし、サクッと行くか!」



 王都から北に位置するこの森の名はヴァルコイの森。ヴァルコイと言うのはアストリアで白という意味。王都は通年を通してカラッとした暖かい気候だったのに対し、こちらは日中でも肌寒さがあり、湿気が多い。桜達が地図の指し示す場所へ向かえば向かうほど、森の中は霧に覆われ、自分がどこに立っているかすらも分からなくなる、危険な森だった。

 もちろん神の力を宿し、ヴァルナフォンがある3人にとってはこの霧も「すごい」と言う程度のことで済むのだが。



「あ、この中みたい。」

「あそこから入れそうだよ!中から音がする!」

 霧の中を迷うことなく突き進んだ3人の前に現れたのは大きな岩壁。上を見上げても霧のせいでどれほどの大きさか判別することはできないが、ラビが見つけた洞窟の入り口は随分と広かった。


「この中に家を建てることができる方がいるんですね?」

「多分。アプリにはそう出てるし、とりま灯つけて奥に行ってみよっか。」

「待ってください。サクラ様の灯りだと眩しすぎる可能性があるので、私が。『点灯ライト』」

「へえ、光の玉ってこんな小さい感じでも出来るんだ。」

 桜が作る光の玉は例えるならばリビングの電球。家の中全てを明るくさせられるほどの輝きを放っていたが、ラングレーのそれは懐中電灯ほどの明るさだった。


「…普通はこれくらいなんです。足元に何があるか分かりませんから、気をつけて進んでください。」

「りょ!」



 洞窟の中は複雑に入り組んでいるようで、2つ、3つに分かれている道がいくつも存在したが、地図アプリを拡大すれば目的地まで迷うことなどなかった。


「あ、見てみて。これ線路じゃね?」

「カンカンって音も大きくなったよ!」

「…ええ、私でも聞こえるようになりました。どんな方か分かりませんし、お二人は後方にいてください。」

「いや、変な奴だったらランランだって危ないじゃん。バリアとかで攻撃跳ね返すのお約束だし、あたしが前にいた方が良くない?」

「ばりあ?それが何かは分かりませんが、攻撃を跳ね返すなんてことが可能なのですか?」

「やったことはないけど、出来そうじゃない?」

「…二人ともなるべく静かに近づきますよ。」


 ラングレーは最早桜に対してまともに相手をしようと思わなかった。


 ラングレーの指示通りなるべく足音を立てないようゆっくりと進んでいくと、灯りが見え、カンカンと言う音とともに話声や笑声が聞こえてきた。



「おい!それ運んどけよ!!ボケっとしてんな!」

「ここはもう終わりでいいのか!?」

「テメェ、それは俺のだって何度言ったら覚えんだ!」


 汚らしい言葉遣い、低い声とは反対に、目の前に広がるのは桜の膝丈ほどの背の白い髭の小人達がツルハシを使って採掘している、おとぎ話の1シーンのようだった。


「やば、小人とか初めて見たんですけど。テンション上がるわ。…ん?わっ、何、きゃーーーーー!!」


 桜がもう少しだけ近くて見ようと一歩を踏み出した瞬間、何かを踏んだ感触と共に天井からネバネバとした糸が降ってきた。


「え、超ベタベタしてる。キモっ。」

「誰だテメェら。どうやってここに来た。答えなければ殺す。」


 動けば動くほどに纏わり付く糸は彼らの作った罠だった。


 あっという間に桜達は囲まれ、ツルハシを突きつけられた。彼らの目は本気だった。


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