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第40話 ハイタッチ!

 ラングレーの手配によって得られた桜と獣人達のタピオカ屋は、肉屋や魚屋が並ぶ市場から少し離れ、服屋や雑貨店のそばにオープンした。

 魔力を有さない獣人達が荷物を運ぶことを考慮し、屋台をレンタル。一月分のレンタル費用だけで、ラングレーにもらったお金を全てつぎ込む形となった。



「いらっしゃいませー!甘くて美味しいタピオカ!回復効果も付いてますよー!」

「今だけオープン記念価格、1杯1セルですよー!」


 看板娘はラビとメルミア。二人はフリルの付いた可愛いミニスカートのメイド服を纏い、街行く人たちの注目の的となっていた。


「良かったらいかがですか?」

「…俺、一杯飲んでみようかな。」

 遠巻きに見ていた男達に声をかければ、一人が恐る恐る屋台へと近付いた。


「いらっしゃいませ!甘さは普通でよろしいですか?」

「お、おお。」

 桜が魔法で加工して作ったコップに入れ、ストロー代わりの茎を刺して渡す。ブラックティー故にタピオカの見た目が隠れ、逆に良かったかもしれないと桜は思った。


(日本でもカエルの卵みたいって言ってる子いたしね…)


「下の方が甘いので、混ぜながらどうぞ。タピオカ吸い込みすぎると咽せるので気をつけて飲んでくださいね!」

「…う、美味い!!!」


 最初の一人が肝心。見知らぬものでも誰かが美味しいと言えば、看板娘の色気に集まった人たちも抵抗が少なくなる。


「俺も買ってみる!」

「俺も!」

「ありがとうございます!順番に並んでくださいね!」


 集まっていた人達が一斉に押し寄せるも、すくってタピオカをコップに入れる、紅茶を注ぐ、ストローを出す。この3ステップで完成するタピオカティーは、客を待たせることもなく、好評だった。


 そして昼過ぎにはこの日のために用意していた分のタピオカは完売。大盛況にて初日を終える事が出来た。


「お疲れ様〜!やったね、大成功!イエーイ!」

 桜が上に手を挙げるとラビとメルミアはキョトンとした顔をする。


 桜は二人の手を上に持ち上げ、

「良いことあった時は、こうやって、ハイタッチ!イエーイ!」

とニカっと笑った。


 キョトンとしていた二人もにっこりと笑うと

「イエーイ!」

と桜の手にハイタッチをした。



「じゃ、今日はもう帰ろうか。家帰ったら制服綺麗にしないとね!」


 帰ろうとする桜をメルミアが呼び止めた。

「あ、あの、本当にこんな綺麗なお洋服を私たちが着てもよろしいのでしょうか?」

「何度も言ってんじゃん!それは二人のためにあたしがデザインして作ったんだから、二人の服だよ!めっちゃ似合ってし、気にしないでって。」

「ありがとうございます。」

「きゃー、マジでメーちゃん泣かないでよ!ほら、お家帰ろ!みんなに報告しなきゃ。明日からも同じ感じで出来そう?」

「ハイ、精一杯努めさせていただきます。」


 メルミアの大粒の涙を桜は指で拭い取り、迎えに来たベリアルに屋台を引いてもらい、3人は帰路へとついた。



 ♢


 ラングレーと合流し城へと帰る馬車の中、桜は口元が緩むのが止められなかった。


「…随分と面白い顔をされていますが、ともかく成功して良かったですね。」

「うん!あたしが行けるのはまた来週だけどさ、あの感じなら上手くいきそうな気がする。」

「儲けが早く出ないと困りますね。あの服、ご自分の貯金も全て使ってしまったんでしょう?」


 二人が着ていた制服は、偶然桜が古着屋を見ていた際に声をかけられ出会ったデザイナーに頼んだものだ。桜の制服、そしてこの世界では珍しいミニスカートに対し、引くどころか彼女は素晴らしいと絶賛したのだ。


 デザイナーの名前はアナ。アナは幼い頃から夢見ていた針子の仕事に就いてはいるが、独創的なデザインが貴族受けはせず、ほつれやサイズ直しという簡単な仕事のみを行う日々の生活に辟易していた。

 この世界ではミシンなどといった機械の発展がないため、衣類は全て手作業。新品の服は針子が全てオーダーメイドで布から作成をするため貴族の衣類のみ。平民は基本的に古着屋で購入するのだ。

 偶然出会ったアナに対し、桜はデザインのイメージを伝え、制服のオーダーを依頼した。もちろんデザイナーとしては駆け出しだとしても、針子に依頼をする以上、それ相応の費用がかかった。しかし桜は制服を妥協することなく、全財産で二着分の制服をオーダーしたのだ。



「いいのいいの。寮にいればご飯も食べれるし、お金は使わないとさ!あの制服があったからこそ、可愛い店だってなったし、客も集まったんだから!てかあの二人超可愛かったよね〜。いっぱい写メちゃった!お金貯まったらあたしの分の制服もオーダーしようかな〜。」

「…随分と珍しい給仕服でしたね。つい見てしまう気持ちも分かります。」

「メーちゃん、おっぱいおっきかったよね!羨ましい〜!」

「…そういった発言は女性がしない方がいいですよ。まぁサクラ様は、き、キンケリ…ぷっ」

「マジ、ランランそのネタでいつまで笑う気なん?」



 小刻みに震え出すラングレーに若干引きながらも、桜は清々しい気持ちでいっぱいだった。


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