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第37話 無料だから安心して

 獣人全員についていた汚れを取り、配膳も終えると、桜はこれからの計画を発表した。


「色々考えたんだけど、タピオカ屋をやろうと思いま〜す!」

「「たぴおか?」」


 聞いたことのない単語に獣人及びラングレーも一同に首を傾げた。


「タピオカって言うのは、丸くてモチモチしてる食べ物なんだけど、お茶とかに入れると最高に美味しいのよ!あたしの世界でも超バズってて、人気店だと何時間も並ぶんだよ!」

「…つまり、飲み物の屋台をやられると言うことですか?」

「そ!タピオカならさ、結構お腹にも溜まって飲みながら街散策とかもしやすいし、パッケージ可愛くしたら映えるから女の子達絶対買いに来ると思うんだよね〜。」


 嬉しそうにタピオカを懐かしむ桜にラングレーは指摘した。

「御言葉ですがサクラ様、それは難しいのではないでしょうか?」

「なんで?」

「紅茶というのは外国からの輸入品ですので、値が高く、貴族向けの商品です。その飲み物を幾らで売るつもりでいらっしゃるか分かりませんが、貴族向けの販売は我々には難しいことはお分かりですよね。

 しかし値が高ければ平民が飲み物に金を払うとは思えません。」


 ラングレーの言葉に獣人達も確かになと、俯き始めた。


「大丈夫!ほぼ無料で作れるから!」

「は?」

「ふふふ、ま、とりま見ててよ!今日はみんなにも試飲してもらおうと思ってたし!」

「はぁ…。」


 疑っているラングレーを見ては嬉しそうに、桜は収納ストレージから鍋と枯れ木を取り出し、鍋に水を入れ火を着けた。

 もちろん水も火も魔法だ。エドナーにもらった指輪のおかげで魔力が抑えられているため意識せずともわずかな量しか出すことが出来なくなっていたが、生活魔法以外の魔法を使用する桜にラングレーは驚いた。


「サクラ様、宜しいのですか。」

「うん、大丈夫、エーさんに許可もらって来たから。」

「…なら結構です。」


 獣人達は生まれながらに身体能力は高いものの、魔力を一切有さない。そのため生活魔法がどんなものなのか、火や水などは適性がなければ使用できない魔法だということなど知らない。

 エドナーはそれでも桜が魔法を使うことを良くは思わなかったが、桜から頼まれればNOとは言えなかった。


「魔法が使える人間は便利だなぁ。」

「えへへ、あたしも最近使えるようになったんだけどね。

 ここに小さいザルを置いて、葉っぱ入れて蒸して〜、香りが出てきたらOK。そしたら外に出して、乾燥ドライ!もみもみして、乾燥させてを何回か繰り返したら…はい、茶葉完成〜!」

「お〜!」


 茶葉など見たこともない獣人達ではあったが、桜につられて歓声が上がる。


「本当は水で作った方が美味しいらしいけど今日は時間ないから、お湯でお茶淹れて、氷入れたコップに注いだら冷たいお茶完成!んで、ここに作ってきたタピオカもタレごと淹れて、完成〜!はい、これで吸いながら飲んでね。じゃ、ラビどうぞ。」

「あ、ありがとう。」


 1番前で見ていたラビに桜がコップに入れたタピオカ入りのブラックティーを渡した。茶色い液体、更には下にドロっとしたしたものが沈澱しているその怪しげな飲み物をラビは恐る恐る口にした。


「…あ、甘い!!!それに、モチモチしてて、すっごく美味しい!」

「でしょ〜!みんなのコップにも淹れるから貸して〜!」

「おお!これは本当にングッ!ゲホッ」

「あ、勢いよく吸いすぎるとタピオカってマジで咽せるから気をつけてね。」

「先に言ってくれよ〜!」

「あはは、ごめんごめん!下の方が甘いから混ぜて飲むといいよ!」

「うん。これ甘味があって凄いうまいな!それになんだか元気が出てくるぞ!」

「好評みたいで良かった〜。ランランもどう?美味しい?」


 獣人達が楽しんでいる中、ラングレーは無言で啜り、一度離したと思えば再度口をつけ、そのまま一気飲みした。

「…ランラン、喉乾いてたの?」

「サクラ!」

「な、なに!急に大声出したらビックリすんじゃん。」

 

 ラングレーは桜の肩を掴み、食い入るように身を乗り出してきた。

「これは、一体何で出来ているんだ!!これが紅茶だなんてあり得ない!!!紅茶は普通もっと苦味があって、とても子供が楽しめるものではないはず!それにこの感覚、回復薬になってるな!?」

「ちょ、近いよ!」

「あ、ああ、すみません。少々取り乱してしまいました。

 ですが、これが無料で作れるというのは、無理がありますよね?先ほどお作りになった茶葉、そしてこの柔らかい食感の物、沈殿している甘味の液体にも砂糖が使われているのでは?どれもかなりの値がしそうですが。」

「確かにな。美味いけど、俺らみんな金なんて持ってないし…。」


 ラングレーの言葉に先ほどまでとは一転。みんなの耳が垂れてしまった。


「ちょ、なにテン下げしてんの!マジでこれ全部無料なんだって!」

「サクラ様、彼らに援助ではなくサポートをしていくのであれば、原価を考えなければ商売は成り立ちませんよ。」

「もう!したらさ、まだ今日は時間あるし、一緒に外に行こ!」

「外?」

「そ。マジで無料だってこと、教えてあげる!」



 そうして桜は獣人達を引き連れ、初めて街の外へ出たのであった。


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