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第29話 化け物って!

 神殿に戻ってきた桜が立ち上がると、神官は咳払いをした。神官の許可なく動いてはいけなかったようだ。


「…ゴホンッ。ではこれにて無事に鑑定の儀が終わりました。最高神ヴァルナ様のお告げはこの書に認めました。ご確認を。」

「あ、はい。ありがとうございます。」


 神官から鑑定の書と書かれた紙を受け取り、神殿・教会の外に出ると、うっすらとした街灯が灯っているだけでほとんど何も見えない程に暗かった。


「うわー、めっちゃ暗いね。」

「夜道は危険です。急いで帰りましょう。」

 帰りは用意してもらった豪華な馬車だったため、行きとは異なり、椅子にはクッションが敷かれ快適だった。


(確かにランランがこの馬車に乗りたがる理由も分かるわ。)


「サクラ、鑑定はどうだった?ヴァルナには会えたか?」

 エドナーが真剣な表情で見つめてきたが、当の本人はよく分かってはいなかった。


「会えた会えた!あ、ルナに会えるのって普通なんだ。あたしが特別なのかと思ったわ。なんか能力値は結構高めらしい!あとね、ルナと連絡取れるようにスマホ改造してもらった!」

「ルナ?それは最高神ヴァルナのことか?」

「そそ!ヴァルナって言いづらいから、ルナって呼ぶことにしたんだけど、ルナってマジ良い奴で。あたしに併せてギャルになってくれて、超話しやすかったの!この世界でギャルとかいないからさ、マジ感激した〜!」


 ヴァルナとの会話は神殿にいた者達には聞こえていなかったようで、桜が楽しそうに何があったかを二人に話すと、二人は揃って頭を抱えた。


「でさ、あたしが魔道具壊すのって魔力が高すぎてヤバいかららしんだけど、エーさんにコントロールの仕方教えてもらえばいいんかな?エーさん?どしたの、酔った?」

「…サクラ、その話が本当だとすれば危険だ。」

「危険?あたし自分から物壊したりとかしないから安心してよ!」

「そうではない。お前の身が危険なんだ。貸してみろ。」


 エドナーが桜の手から鑑定の書を取り広げると、神官すらも中身を見ないようにすぐに封をしていたものを開いてしまった。

 青ざめていた顔はより一層青くなり、紫にも見える。


「…そんなヤバい?」

「…サクラ、俺の魔力量が王国一だというのは知っているな。」

「もち!エーさんは超凄いんでしょ!」

「その俺の魔力量は3600。」

「へー。多い、んだよね?」

 状況を理解していない桜の様子に呆れたようにラングレーも口を出した。


「当たり前です。私も一応魔力は多い方なので1200ですが、ブライン様の数字は歴史に残るものです。

 貴族のほとんどは魔力を持つ者同士で婚姻しますが、平均800程度でしょう。平民ですと、400もあればそれなりに良い職に就けますね。」

「へー、ランランも凄いんだね!」


 エドナーとラングレーの説明を聞いても、今まで魔力量など気にして生きたことがない桜にとって今一つピンとこなかった。


「…いいか、サクラ。お前の数字は125000となっている。」

「は?え、十万?桁、おかしくない?」

「更に魔法適性は火・風・水・土・雷の5属性全てにあり、生命力も同じく十万を超えている。」

「それもヤバい?」

「ええ、化け物ですね。」

「言い方!!」


 桜はラングレーの化け物発言を指摘したが、二人の説明からいかに自分が“化け物“かを流石の桜も悟った。


「…でもまああたし別に魔法極めたいとかないし、大丈夫じゃない?」

「俺は隠すべきだと思う。」

「私もそれは賛成です。このままをお見せした場合、サクラ様はもう自由に行動することは出来ないでしょうね。そうすれば私も今のように気ままな護衛は出来ず、訓練兵に戻されてしまいます。」

「いや、最後のはランランの希望じゃん。でも自由に動けないのは嫌だな〜。

 じゃあこれ見せないで隠しとく?今日行きませんでしたって言えば良くない?」

「今日の外出目的は神殿での鑑定ですから、それは難しいでしょうね。神官達も王から聞かれれば口を割らずにはいられないでしょうし、城に戻り次第すぐに王へ報告する約束となっています。」

「えーじゃあもう時間ないじゃん。王様にこれ、ミスかもって言えば?」


 ラングレーは桜の提案を馬鹿にしたかのように溜息をつきながら却下した。

「サクラ様の世界では神がミスを犯すことがあるのでしょうか。これは神から与えられし書物。唯一無二のものであり、間違いなど有り得ません。」


 桜はまたへーと小さく頷いた。ラングレーの言葉も理解は出来るが、日本という多種多様な宗教行事をなんの抵抗もなくすんなり受け入れられる、宗教観の低い国で生まれ育った桜にとって、神を奉っている彼らの気持ちを理解するのは難しかった。


「あ、じゃあさ、それくれたのルナなんだしルナに聞いてみるわ!ちょい待って。すぐ返信くると良いんだけど…」


 桜は慣れた手付きでスマートフォンからこれまで使っていた通信アプリを立ち上げた。1000を超えるほどの友達リストは全て消え、ヴァルナだけになっていた。


 桜が動かす手を止めると、すぐにポンッと言う音と共にスマートフォンが点灯した。

「やば、ルナ超返信早い。ウケる。おけ、なんとかなるっぽいからあたしに任せて!」


 ニカっと笑う桜に不安を抱きながらも、二人は渋々桜の案に乗ることにした。


 そして城に戻ると3人はすぐに王の待つ部屋へと向かったのだった。


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